サッカー・ワールドカップ(2014 FIFAワールドカップ)の開催が2014年6月12日に迫るなか、中国が「サッカーの起源は中国」と主張している、などと国内外のメディアが報じた。FIFAも承認しているのだという。
この報道はイギリスやイタリアといったサッカー発祥を公言する国で物議を醸しているようで、日本でも「ありえない」「中国も韓国のウリジナル(韓国起源説)病が発症」などと騒ぎになっている。本当にサッカーは中国発祥なのだろうか。
サッカーの商業性を高めるために中国にすり寄った?
毎日新聞(14年6月11日付け)などによると、中国のシ博(しはく)市には歴史博物館があり、所蔵している古地図の中に中国からエジプト、ギリシャ、ローマ、イングランドまで到達する線が描かれたものがある。それは「斉時代の蹴鞠(けまり)」が西方へ伝わりサッカーに発展した」ことを示すもので、サッカーは中国起源を主張するものだという。そしてFIFAのブラッター会長が認定証を送ったのだそうだ。
これに対しイギリスではモノを蹴って遊ぶ行為は世界中の民族で見られることであり、サッカーのルールが成立したのは19世紀の英国だと反発している。また、サッカーの商業性を高めるために中国にすり寄ったとブラッター会長を揶揄する専門家もいる、と主張している。
ネットではサッカーが中国発祥だとはにわかには信じられないとして、
「サッカー弱小国が元祖って・・・バカじゃねえのw」
「世界妄想発祥地綱引き選手権・・・・中国VS韓国・・・」
「少林寺サッカーは、しっている」
などといった書き込みが出ている。
サッカー発祥の地については諸説あり、イタリアは8世紀前から行われていたボールを蹴りあって賞金を懸けた「カルチョ」こそが起源と主張。イングランドは8世紀頃に戦争で敵国に勝つと負けた将軍の首を切り取り、蹴って戦争の勝利を祝う風習がサッカーの起源としている。それでは中国はどうなのか。
実は、今回の報道にネットではFIFAが認めているのは周知の事実だ、と主張している人が少なからずいる。04年にブラッター会長が中国を訪れ発祥の地として認定したというのだ。
「最も有力な説、に留めておくほうがいいのではないか」
05年10月24日付けの読売新聞を読むと確かに、
「国際サッカー連盟は、日本に伝来した中国の蹴鞠をサッカーの起源の一つと認定している」
という記事が掲載されている。中国の新聞「人民網」04年7月16日付けによれば、FIFAのブラッター会長が04年7月15日に「第3回中国国際サッカー博覧会」の開幕式に出席し、「世界のサッカーの発祥地は中国である」と宣言した。04年初めにFIFAが、サッカーの起源を古代中国の「蹴鞠」と認定したことを受けたもの、と書いている。その後、中国ではサッカー博物館を開館したり、サッカーの記念コインなどを出したりしている。
この「蹴鞠」というのは紀元前3世紀ごろの黄帝の時代に軍事訓練として考案されたもので、日本にも伝わってきた。ただし、日本の蹴鞠は蹴るだけだったが、中国では1チーム12人で構成し、鞠を奪い合いながらゴール(球門)に入れる球技として発展していったのだという。
こうしたことが事実であり、FIFAも認めているならサッカーは中国起源ということでいいのかもしれないが、イギリスやイタリアなどは「FIFAの一方的な主張」として認めてはいないようで、ネットでは、
「中国発祥が最も有力な説だ、に留めておくほうがいいのではないか」
などと考えている人もいる。