ゆうちょ銀が新規業務を断念? TPP交渉での争点化を嫌う 

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   日本郵政グループのゆうちょ銀行が認可申請中の住宅ローンや中小企業向け融資などの新規業務が宙に浮きそうだ。西室泰三日本郵政社長が最近、周囲に「ゆうちょ銀とかんぽ生命が(株式)上場するまでは難しい」と、事実上断念する意向を漏らしているというのだ。

   環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で国有企業と民間企業の競争条件を対等にする協議が焦点の1つとなっている中、国が唯一の株主である郵政グループが新規業務に乗り出せば「民業圧迫」の批判が再燃しかねず、TPP交渉の争点になりかねないことへの配慮からだという。

地方銀行などはほっと安堵の色

TPP交渉で揺れる日本郵政(画像はアフラック企業ホームページのスクリーンショット)
TPP交渉で揺れる日本郵政(画像はアフラック企業ホームページのスクリーンショット)

   ゆうちょ銀の新規業務については、早ければ2015年春の株式上場に向けてグループの収益力強化を目指す日本郵政と、審査体制の整備の遅れに懸念を示す金融庁の意見が対立。郵政民営化の進ちょく状況を監視する政府の郵政民営化委員会も、1年以上結論を先送りする状態が続いていた。

   西室社長は同委員会に対する住宅ローンなどの申請を近く取り下げるとみられ、ゆうちょ銀の融資業務進出に警戒感を募らせていた地方銀行幹部などはほっと安堵の色を浮かべている。

   だが、これに納得できないのが生命保険業界だ。

   郵政民営化委員会は6月5日、日本郵政グループのかんぽ生命が申請していたアフラック(アメリカンファミリー生命保険)のがん保険販売を認可することを決めた。日本郵政がアフラックとの業務提携を発表したのは13年7月のこと。がん保険分野で日本国内の7割という圧倒的なシェアを握るアフラックという巨人が、全国津々浦々、約2万の郵便局を営業拠点として販売を拡大できるようになるのに加え、今後は79あるかんぽ生命の直営店でも正式に販売できるようになるのだから、競合商品を売る国内生保が驚異を感じるのも無理はない。

アフラックとの提携が日本のTPP交渉入りの「持参金」?

   アフラックのチャールズ・レイク在日代表は、かつて米通商代表部(USTR)日本部長で、全米商工会議所の幹部としても日本郵政グループの金融業務などへの「民業圧迫」批判を繰り返してきた人物。そのレイク氏が、日本郵政との提携を発表した記者会見で「ウィン・ウィンの関係になる」と笑みを浮かべたのは記憶に新しい。

   日本郵政の収益力を強化する目的だけなら、日本の生保などが販売する選択肢もあったはず。だが、西室氏はかつて日米財界人会議の日本側議長を務め、レイク氏とは旧知の関係。西室氏は、アフラックとの提携強化とTPPとの関係について明言を避けているが、日本の金融関係者からは「アフラックの件が日本のTPP交渉入りの『持参金』だったことは今や疑いもない」との声がしきりだ。

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