サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会の開幕が迫ってきた。日本代表の初戦は、日本時間で日曜日の朝10時にキックオフとなる。
W杯の日本戦と言えば、試合後に多くのサポーターが集まる場所がある。東京・渋谷駅前のスクランブル交差点周辺だ。ましてや当日の時間帯は、買い物客や観光客でにぎわう日曜の昼前後。混乱が起きないか心配だ。
日韓大会でもサポーター「大暴れ」で逮捕者
警視庁は、日本-コートジボワール戦が行われる日本時間2014年6月15日の10時~14時、JR渋谷駅周辺に規制区域を設ける。駅前のスクランブル交差点だけでなく、飲食店や商業施設が立ち並ぶ「センター街」まで含まれた。およそ800人の警官を配備して、サポーターが交差点にとどまって一般歩行者や車の往来の妨げとならないように誘導する。混乱を未然に防ぐ態勢を組む一方、大規模な通行規制は実施せず、「斜め横断禁止」の措置もとらない。
今や日本代表を応援するサポーターたちにとって、渋谷交差点は象徴的な場所となっている。だが過去を振り返ると、大暴れしてトラブルにつながった例も少なくなかった。
さかのぼると2002年のW杯日韓大会で、すでに渋谷交差点はサポーター集結の場となっていた。その様子が動画投稿サイトで見られる。2002年6月9日のロシア戦で日本は1-0で勝利し、初のW杯白星を飾った。この日は日曜日で、比較的渋谷に集まりやすかったと思われる。映像を見ると、試合後の夜に大勢の人が駅前を埋め尽くし、踊りながら交差点を渡る若者たち、「日本勝った」という見出しのスポーツ紙号外が張り付けられた「ハチ公」の銅像が映っていた。歩道は通行できないほどぎっしり人であふれている。上半身裸で駅の屋根からぶら下がる男性、さらには警官を突き飛ばして取り押さえられた男と、騒然とした様子が見て取れる。翌日の毎日新聞夕刊によると、渋谷駅前では3人が公務執行妨害容疑で、さらに少年ひとりが下半身を露出させたとして公然わいせつ容疑で、いずれも現行犯逮捕されていた。
日本が16強入りした前回W杯の2010年も、勝利を飾ったカメルーン戦やデンマーク戦後に、渋谷交差点は大勢のサポーターであふれた。このときも、人波でストップしたタクシーのボンネットに上がったり、街頭や信号機によじ登ったりして警官に連行される人が出ている。
厳しい通行規制なし、「DJポリス」も来ず
日本代表がW杯ブラジル大会出場を決めた2013年6月4日夜も、多くのサポーターが渋谷に詰めかけた。警察側は「厳戒態勢」を敷き、通行規制も実施した。この時に有名になったのが「DJポリス」だ。サポーターを誘導する際に車上からマイクで「サポーターの皆さんは12番目の選手。ルールとマナーを守って今日の喜びを分かち合いましょう」「怖い顔をしたおまわりさんも心の中では日本代表のW杯出場を喜んでいるんです。どうかおまわりさんの言うことを聞いてください」などとユーモアたっぷりに呼びかけながら交通整理にあたった。その効果か、大きな混乱が起きることはなかったようだ。
今大会の日本代表初戦が行われる6月15日は、日曜日の昼間という通常でも渋谷が混雑する時間帯だ。コートジボワールを撃破すれば1次リーグ突破の可能性が高まるだけに、喜びにあふれたサポーターが続々とやってくるだろう。試合開始時点から渋谷の飲食店などで観戦する人もいるかもしれない。大勢が集まる条件がそろっているうえ、当日営業の商店に配慮してか、1年前は行われた斜め横断通行禁止や一方通行規制、混雑緩和のためのう回ルート設定といった措置はとられない。飲食店や商店は、人の流れが妨げられないので集客が見込めると期待する声がある一方で、「客でない人がどんどん店内に入ってきたらどうしよう」と心配する向きもある。
今のところ、日曜日にDJポリスは渋谷で警備にあたらないようだ。やや「緩め」の規制に、休日の渋谷駅前という状況下で、サポーターの「フェアプレー精神」が試される。