日本人にとってはスピーキングのレベルが障害になるかも
留学事情に詳しい国立大教授に聞くと、日本人にとってはスピーキングのレベルが障害になるかもしれないと指摘した。日本人の平均点は、ビザ申請条件で設定された基準点を下回る。大学側がTOEFLの総合点を見て入学許可を出したとしても、ビザ申請が却下されるケースが生じるのではと懸念する。
同じ留学でも、大学の学位ではない「資格取得」を目的とする、また専門学校や職業訓練学校を志望する場合は、条件外となるためTOEFLのスコアは認められない。「資格取得」のコースは期間が1年と大学と比べて短く、終了後に不法滞在や就労目的の入国の「隠れ蓑」に悪用される恐れもあるため当局が除外したのではないかと、教授は推測する。
スピーキングに自信がない、あるいは学位目的の留学でない場合は、TOEFL以外の認定テストを受ける手がある。大きな規模で実施されているのが「IELTS(アイエルツ)」だ。日本ではブリティッシュ・カウンシルと日本英語検定協会が共同で運営する。英国を含む135か国・8000の教育機関に認定され、年間の受験者数は世界で200万人に達する。「世界的には、今ではTOEFLの受験者を上回るかもしれません」と、教授は話す。
ただし難点もある。国内ではTOEFLと比べて受験できる場所が少ないのだ。現在、全国15都市で実施されているが、TOEFLは30都道府県、約60か所とずいぶん差がある。IELTSは、東京では月2回程度行われる一方、金沢や高知の会場は半年に1度しか実施されず地方在住者にとっては不便だろう。申し込み期間も、IELTSが「各試験日の5週間前の金曜日の17時」なのに対して、TOEFLなら試験日1週間前まで、割増料金を払えば試験日前の営業日の17時まで受け付けてもらえる。
受験料の違いを指摘するのは、私立大で英語を教える女性教員だ。IELTS は2万5380円。TOEFLは225ドル(約2万3000円)とやや安い。
これまでTOEFL対策の勉強を進めてきた人にとって、急にIELTSにシフトしなければならないとすれば、頭が痛いだろう。
ひとまずは一定の条件下でビザ申請に認められるようになったTOEFLだが、英当局とETSの契約は今も切れたままだ。英内務省の物言いは「ETSのスコアの取り扱いは現在検討中」となっており、不透明な状況が続く。