ドコモが切り札「音声通話定額制」導入 高音質を武器にLINEを「けん制」

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   NTTドコモがスマートフォン(スマホ)の新料金プランに、通話定額制を取り入れた。競合のKDDI、ソフトバンクモバイル(SBM)に先駆けて「かけ放題」を実現した形だ。

   音声通話は近年、収入減が止まらない。定額制導入は「ジリ貧」の流れに歯止めをかけるためか、それとも別のねらいがあるのだろうか。

LTEネットワークで音声通話を可能にする新サービス

ドコモの店舗では新料金プランをアピール
ドコモの店舗では新料金プランをアピール

   ドコモの新プランは、スマホでの音声通話量が月額2700円で国内かけ放題となる。これまで、「LTE」に対応するスマホの料金プランでは、通話料金は30秒あたり20円で換算されていた。定額制は、業務で頻繁に携帯電話を使用するビジネスマンなどにとっては朗報だろう。

   スマホ対策ではSBMやKDDIに後れを取ってきた感のあるドコモ。米アップルの「アイフォーン(iPhone)」投入も2社と比べて遅く、2013年9月に「参入」したものの大幅な契約者増につながるほどの起爆剤になったとは言えない。だが今回の「電話かけ放題プラン」は、先行して仕掛けた。

   スマホの音声通話に限ると、通信会社だけでなく通話アプリも「ライバル」だ。中でもLINEは、アプリから固定、携帯電話に格安料金で通話できるサービスを始めている。30日のプランを選べば、国内なら1分6円だ。ドコモの定額料金が2700円なので、単純計算で450分の通話時間に相当する。これより長く通話するならドコモが「お得」だが、あまり電話をかけない利用者にとっては、定額制は必ずしも大きな魅力とはならないだろう。

   青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏は、ドコモがLINEを含む無料通話アプリを意識していると話す。ドコモは2014年5月14日の夏商戦向け新製品発表会で、LTEのネットワークで音声通話を可能にする新サービス「VoLTE」を6月下旬にスタートすると発表した。従来の3G回線による通話に比べて高音質となり、定額料金で質の高い通話ができるようになるとアピールする。

「今回ドコモは、コミュニケーションの手段としての音声通話を見直そうと強調しているように見えます。高音質を武器に、通話アプリをけん制するねらいがあるのではないでしょうか」

KDDIが今夏にも「かけ放題プラン」を導入?

   ドコモが通話料定額制に踏み切った以上、競合他社も追従するのは時間の問題だ。現に複数のメディアは、KDDIが今夏にも「かけ放題プラン」を導入する見込みだと報じた。SBMは、音声定額とパケット定額をセットにしたプランを4月21日に提供開始の予定だったが、「競争環境の変化に鑑み」延期し、ドコモ発表後の6月7日に改めて「7月から導入」と発表した。3社の足並みがそろえば、ドコモが2社から顧客を奪う決定打とはならないだろう。

   木暮氏は、定額制のねらいは「他社向け」だけでなく自社の顧客対策にあるのではないかとみる。ひとつは、キャッシュバックによる「乗り換え」優遇の廃止だ。一時の過熱ぶりと比べると現在は沈静化した感はあるが、定額プランを持ち込むことで「高額の現金だけ受け取り、最安プランを契約して、後は使わないユーザー」を排除したいというのだ。もうひとつは、大量データ通信の抑制。実は通話料とセットで提供されるパケット定額プランも、利用可能なデータ量に応じた料金に改定した。個人使用の場合、2GBと5GBの2プランだ。従来の最大7GBから上限を抑えており、ネットワークの負荷を減らす試みとも考えられる。

「音声を定額にして収入増を諦め、データ通信を収入の柱にする」(2014年6月2日付・日本経済新聞朝刊)
「各社は定額制の導入により、通話収入の減少を食い止めたい考えだ」(2014年6月1日付・毎日新聞朝刊)

   こうした報道から、通信会社にとって音声通話はもはや大きな成長が見込めないことが分かる。それでも木暮氏は「定額制の実現は国内では史上初で、インパクトは大きい」と評価する。ドコモはまず、課題となっていたキャッシュバックとデータ通信の過度利用の問題の解決を図る。一方で、今回発表した「VoLTE」の普及が進めば、相対的に3Gの利用頻度は減るため、使わなくなった3Gの帯域をLTE拡充のために活用できるといった効果も将来は期待できると、木暮氏は指摘する。データ通信量は年々大きく伸びており、その対策も欠かせないというわけだ。

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