世界遺産の合掌造りの集落で知られる富山県南砺市五箇山の国道で、高さ30メートルもあるブナの木が倒れて通りかかったクルマを直撃した事故は、運転していた男性が軽いケガで済んで事なきを得たように思えたが、じつは男性の「ショック」は相当なようだ。
というのも、巨木に押しつぶされたクルマが、オークションにかければ1億円超はするとされる「トヨタ2000GT」だったらしいのだ。
ブナの木は「根と幹のつけ根あたりから折れた」
事故は2014年6月8日午前9時40分ごろ、合掌造りの集落で知られる富山県南砺市五箇山にある「菅沼合掌造り集落」近くの国道156号線で起こった。
道路脇の斜面に生えていた高さ30メートル、直径は最も太いところで約1.9メートルあるブナの巨木が根元近くから折れて、9メートル下の国道を横切るように倒れた。
ちょうど、そこを通りかかったスポーツカーを直撃。クルマを押しつぶし、運転していた奈良県大和郡山市の男性会社員(28)が腕や足などに切り傷や打撲の軽傷を負って病院に運ばれた。
南砺警察署によると、木が倒れた原因は現在も究明中。ただ、人為的なものはなく、またブナの木は根が残っており、「根と幹のつけ根あたりから折れたようです」と話している。
その巨木はスポーツカーのボンネットを直撃し、運転者が軽傷で済んだのが、むしろ運がよかったとみられるほどペシャンコだった。
とはいえ、運転者にしてみれば、腕や足の傷よりも、大破したクルマのほうが「痛かった」とみられる。なにしろ、そのスポーツカーは名車「トヨタ2000GT」だったのだ。
これにインターネットユーザーらが反応。たとえば、
「28歳で頑張って2000GT買ったろうに…。可哀想すぎる」
「どうかレプリカでありますように…」
「なんでよりによって2000GTが下敷きになるんだよ。プリウスとかは腐るほど転がってんのによ。どんな確率だよ」
「これは運命論を信じざるを得ない」
「2000GTのオーナー、意外に若くてびびった」
「もったいないが、廃車しかないわ」
といった、驚きや同情の声があがっている。
「1億円」がペシャンコに!
「トヨタ2000GT」は、トヨタ自動車が1967年に生産開始。1970年に生産を終了した、「日本初のスーパーカー」と称される。生産台数はわずか300台あまり。なかでも米国で販売された左ハンドルは100台にも満たないほどといわれる「超レア」もので、2013年にはオークションで、日本車として史上最高値の116万ドル(約1億2000万円)で落札されたことがあるという。
たしかに、「1億円超」の値段がつくかもしれないクルマがペシャンコにされたのだから、運転していた男性は泣くに泣けない気持ちだろう。
一方、今回のように木が突然倒れてくるケースは最近少なくない。たとえば2014年4月には神奈川県川崎市で、幹の中が腐った街路樹が突然折れて、歩いていた人の頭に当たって大けがする事故が起きている。
ペシャンコになったトヨタ2000GTに、自動車保険は効かないのだろうか――。ある損害保険会社に聞いてみると、「あくまで一般論」と前置きしたうえで、「車両保険に加入していれば、保険はおります」と話す。
ただし、トヨタ2000GTのような「プレミアムカー」の場合は、加入を希望しても引き受けるかどうかは「保険会社の、個別の判断」という。また、そもそも加入する段階で、「掛け金もかなり高額になると思います」と話している。