震災で人口の1割近い1284人が犠牲になった大槌町で、犠牲者全員を対象にその人柄や功績などを取材し、記録として残す「生きた証(あかし)プロジェクト」がスタートしました。町役場で5月30日に開かれた第1回実行委員会で碇川(いかりがわ)豊町長は「二度と同じような悲劇を繰り返してはならない。このプロジェクトは、震災時を検証する意味でも、亡くなった方を忘れずに供養する意味でも重要だ」とあいさつしました。
プロジェクトは、一瞬にして不条理に生を奪われた方々を供養し、震災を風化させずに後世に継承する目的で実施されます。2年間かけて遺族らから話を聞き、その結果を記録集にまとめます。具体的には、話をしてくれる人を紹介する案内役、取材する聞き手、記録役の3人1組でチームを組んで町内を回り、「どんな人柄だったか」「どんなエピソードがあったか」「どこで被災したのか」などを聞き取ります。許可が得られれば、映像も残します。
犠牲者一人ひとりの、かけがえのない人生を記録することで、震災を風化かさせまいという強い意思を示す取り組みでもあるのです。
実行委員会は遺族や町内会代表者、町議、学識経験者14人で構成され、プロジェクト全体の調整役を担います。この日の実行委員会では、委員長に吉祥寺住職の高橋英悟(えいご)氏(42)、副委員長に、震災で夫と役場職員だった娘を亡くした上野ヒデさん(71)が選ばれました。
出席者からは「大槌町では犠牲者を町全体で弔おうという雰囲気がある。自分たちも一緒に記録を作っていこうと、多くの人が賛同してくれるのではないか」「遺族から話を聞く際、聞き手が言葉一つ間違うと答えなくなる。震災から3年たったからといって癒えたわけではない」「話をすることで当時を思い出すわけで、話をする側、聞く側双方のメンタル面をケアする態勢をとってほしい」「記録は冊子のほかに、石に刻んで残す方法もある」などの意見が出ました。
高橋委員長は「震災から3年を経過し、話すことで楽になるという人も増えています。残されたものが、犠牲者を忘れずにしっかり生きていくプロジェクトとして成功させたい」と語っています。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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