福島第一原発の所長を務めた故・吉田昌郎氏が、政府事故調査・検証委員会に語った「調査報告書」をもとに報じた朝日新聞の記事に、ジャーナリストの門田隆将氏が疑義を呈している。
朝日の記事では、2011年3月14日から15日午前にかけて、2号機が危機的状況になったことを受けて、所員700人の9割にあたる約650人が吉田氏の「待機命令に違反」し、福島第二原発へ「撤退」したとされている。だが生前の吉田氏にインタビューした門田氏によると、それは事実ではなく、命令に従って退避したのであり、朝日の記事は「逆」だと批判している。
「福島第二に『行ってはいけない』とは全く言っていない」
朝日新聞は2014年5月20日に特集企画「吉田調書 福島第一原発事故、吉田昌郎所長の語ったもの」を新聞本紙のほか、デジタル版でも配信している。朝日新聞は、非公開になっている政府事故調の吉田氏へのヒヤリング記録、いわゆる「吉田調書」を入手、それをもとに記事を掲載した。
問題になっているのは、記事の中の以下の部分だ。
「東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある」
これに門田氏が2014年5月31日付けの自身の公式ブログなどで異を唱えている。生前の吉田氏に「ジャーナリストとして唯一、直接、長時間」のインタビューをした人物だ。調書の記述を読んでも「『自分の命令に違反』して『撤退した』とは、吉田氏は発言していない」と指摘する。