亡くなった人がすぐそばにいる衝撃でいたたまれない
2007年3月18日の米フォックスニュースの記事は、英サンデータイムズを引用する形で、BAが機内で急死した70代の女性をファーストクラスに移動させたケースを取り上げた。座席に体を預けさせるようにして、枕も使われていたという。今から7年前の記事であり、かねてからBAがファーストクラスを「緊急避難先」に利用していたことが分かる。
インド・デリーからロンドンまで9時間、女性の娘が泣きながらずっと遺体に寄り添った。だが、同じ並びに座っていた男性客にとっては「最悪の旅」となったようだ。眠っていた時、乗務員が何も言わずに、急死した女性の体をドスンと置くように座らせた音で目を覚ましたという。事情が分からないので最初は具合の悪い女性が移ってきたと思っていたが、女性の体が大きく揺れ、ずり落ちそうになるため不自然に感じ、尋ねたところ死亡している事実を知ったという。間もなく娘夫婦が席にやって来て、大声で泣き続けた。
肉親の死とそれに対する悲しみに理解を示す一方で、男性自身は「亡くなった人がすぐそばにいる」という衝撃と、悲嘆にくれる娘の光景が何時間にもわたって視界に入り続けたことで、いたたまれない気分だったと嘆いた。遺体が長時間、常温のまま置かれることにも衛生や安全の観点から不安だったという。BAの対応を疑問視した男性は苦情を入れたが、補償は確約されなかったそうだ。
類似のトラブルはほかにもある。2012年6月23日付の米ハフィントンポストは、ケニア航空に搭乗したスウェーデン女性が、急死した乗客の遺体の横に座らざるを得なかった事例を紹介した。遺体は3席分のスペースに横たえられ、カバーがかけられていたという。到着後、女性は航空会社側に損害賠償を求めた。数か月間のメールでのやり取りの末、航空運賃の半額に相当する713ドル(約7万3000円)が女性に支払われた。
豪格安航空のジェットスター航空でも、2011年に同様のハプニングが起きた。仏AFP通信2011年9月6日付の記事によると、食事中だった男性が突然苦しみだし、急死した。飛行時間は9時間以上残っていたがそのまま運航。ジェットスターは、死亡した男性の近くに座っていた乗客に対して協力と理解に感謝を示し、金券を提供したという。具体的な金額は不明だが「薄謝」に近いものだったようだ。