ATMを何回も使うと預金利息より多くの手数料を払うことに
もっとも、こうした「マイナス金利」の金融政策が、消費者にどのような影響を及ぼすのかといえば、わかりづらいし、なかなか実感がわかない。前出の小田切尚登氏も「民間銀行と中央銀行とのやり取りですからね」という。
とはいえ、民間銀行にマイナス金利が反映されないとは言い切れない。
たとえば、日本の銀行が預ける日銀の当座預金の金利がマイナスになれば、企業への貸し出し金利や住宅ローン金利などをさらに押し下げ、その一方で預金には利用者を対象とした手数料が発生する可能性がある。
そうなれば、預金にかかる手数料しだいでは「タンス預金」が増え、場合によっては貸金庫に現金を預ける人が増えるかもしれない。銀行口座を閉じ、ハイリスクハイリターンを求めて株式や投資信託、不動産投資がいま以上に活発になったり、外貨や外債へのシフトが進んだりする可能性もある。
現在低調な個人向け国債は最低金利(0.05%)が保証されているため、安定志向の人にはいい投資先になるかも。国債は変動10年型であれば、金利上昇時にも対応できる。
もう貯蓄するのがバカらしくなって、「使ってしまえ」ということになる、との見方もある。
しかし、気づかないだけで、「すでに実質的にはマイナス金利で預金している人がいるかもしれません」と小田切氏は指摘する。
現状、日本の銀行の預金金利は「ゼロ」に近い。そのため、税込108円のATM手数料を使って現金を引き出せば、回数を重ねるほど預金利息より多くの手数料を払っていることになるからだ。
夜間に利用すれば、プラス108円の216円になる。もはや銀行預金は、ATM手数料を「安心料」と割り切って利用するしかないのだろうか。