2014年6月2日に4年の任期満了を迎えた日銀の雨宮正佳理事(58)が再任された。1998年の新日銀法施行後、任期4年を終えた理事は再任されないのが通例とされてきた。
しかし、13年4月の「異次元緩和」導入を事務方トップとして支えた黒田東彦総裁の側近だけに、2%の物価上昇目標の達成に向けて異例の続投となった。
黒田新体制発足に合わせて呼び戻される
雨宮氏は1979年に東大経済学部を卒業し、日銀に入行。金融政策の企画部門が長く、2000年のゼロ金利政策解除や2001年の量的緩和策導入も、現場の最前線で携わった。2006年に企画局長、2010年に理事に就き、企画部門を担当。同年10月に白川正明前総裁のもと、「包括的な金融緩和策」を導入した際も現場で陣頭指揮を執った、いわば「日銀生え抜きのエース」だ。
2012年にいったん企画担当を外れ、大阪支店長に転じたが、2013年春の黒田新体制発足に合わせて呼び戻され、企画担当に復帰した。背景には、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の第一の矢として大胆な金融緩和策を打ち出そうとしていた黒田総裁の強い意向があったとみられ、この人事自体、異例だった。雨宮氏は事務方トップとして緩和策をとりまとめ、政府との調整にも奔走。こうして2013年4月に導入された異次元緩和はこれまでのところ、円安・株高を誘発して企業業績を回復させ、物価も日銀の見立て通りに上昇基調を維持している。雨宮氏は見事、黒田総裁の期待に応えた。