大手百貨店のお中元商戦が本格的にはじまった。すでに2014年5月から、西武池袋本店や三越日本橋本店などがスタート。6月4日には、高島屋日本橋店や伊勢丹新宿店なども「参戦」する。
4月の消費税増税の影響が懸念されている百貨店業界にあって、4月の売上高は想定よりも軽微だったとはいえ、全体で前年比12.0%減の4172億円にとどまった。そのため、どこも今夏のお中元商戦を反転のきっかけにしようと力を入れている。
平均単価は昨年並みの「4000円前後」を予測
お中元商戦の口火を切ったのは、2014年も大阪だった。5月14日、高島屋大阪店や宝塚阪急などが特設売り場を開いた。
高島屋は、「大阪エリアは、早くに商品を購入すると割引く、『早割』サービスがあるので、今年も他社に乗り遅れないようにスタートしました」と説明。「とくに消費増税を意識したわけではありません」と話す。
今夏も例年どおり、ビールや洋菓子、贈られた人が好みの商品を選べる「カタログギフト」が売れ筋とみているが、高島屋は「『美事を贈る』をテーマに、選りすぐりのもの、このお中元のタイミングでしか買えないものにこだわりました」と、アピールする。
東京都内でもいよいよ「本番」。5月20日にそごう西武傘下の西武池袋本店が先陣を切ってスタート。5月28日には日本橋三越本店が、6月4日には高島屋日本橋店や伊勢丹新宿店、大丸東京店などが続々と開始する。
三越伊勢丹ホールディングス(HD)では、独自の「オンリー・エムアイ」をテーマに身の回りの食材を徹底的に掘り下げた、こだわりの商品を用意。たとえば、三越では食品フロア100周年記念して、三越「鰹節部」誕生時から店頭に並んだ「山政の鰹節」などをそろえた。
三越伊勢丹HDは、三越本店や伊勢丹新宿店の売り上げ目標を、前年比1%程度としている。
ここ数年はデフレを反映して売れ筋商品の単価が下がっていたが、アベノミクスの影響もあり、大手百貨店では2013年のお中元商戦あたりから、ワンランク上の価格帯の商品が売れ出したという。
また、最近はお中元品を自宅用に購入する人が増え、しかも「高級品」や「上質な商品」を求める傾向にある。
大手百貨店では、内心は単価の底上げを期待しているようだが、「消費増税後、初めての商戦で、現状維持がいいところではないか」と慎重だ。2014年の平均単価を前年とほぼ同じ4000円程度とみている。
50歳以上のメイン層客を奪い合う
とはいえ、百貨店のお中元商戦はここ数年、かつての活気が失われている。原因の一つが、高齢化だ。高島屋によると、店頭に来店する人の多くが50歳以上で、「贈り、贈られるものなので、高齢になってくると病気などをきっかけに、どちらともなく行き来がなくなることがありますから」と、話している。
それもあって、高島屋ではオンラインストアでの販売に力を入れている。「お中元売り上げに占めるシェアとしてはまだ8%程度ですが、ここを伸ばしたい」と意気込む。
来店客のメイン層になる50歳以上のお客が各百貨店で「奪い合い」になっていることから、インターネットに注力することで、他社との差別化を図る思惑もあるようだ。
高島屋はこのお中元商戦から、店頭用の粗品には「巾着トートバッグ」、オンラインストアでは若者向けデザインの「ミニクーラーバッグ」と分けてプレゼントすることにした。若者層に増えている自宅での利用も含め、「30~40歳代の利用を促したい」という。
いずれにしても、お中元もネットで購入、配送してもらう時代になってきたようだ。