争奪戦になれば、好条件の大手が強い
深刻化するパイロット不足の背景には、世界的な航空需要の高まりも影響している。欧米から始まったLCCだが、日本を含めたアジアにも拡大し、慢性的なパイロット不足に拍車をかけている。
パイロット育成にはコストと時間を要するため、そもそもコスト面から自社育成が難しいLCCは不利。そこで、「引き抜き合戦が日常化」(航空大手幹部)しているというわけだ。元々、LCCは世界的な航空会社の破たんで職にあぶれるパイロットを取り込んでいた面があり、パイロット需要の高まりでそのルートも細る。待遇がモノをいう争奪戦になれば、好条件の大手に人材を持っていかれてしまうのだ。
こんな状況に、航空業界からは「国内の航空行政にも責任がある」との恨み節も漏れてくる。日本では長年にわたって航空会社の新規参入が規制されてきたためパイロット育成も進まなかった。国内には2013年1月末で約5700人のパイロットがいるが、2022年には約7000人が必要になるとの見通しもある。航空大学校を出て機長として一人前になるには10年以上かかるだけに、政府はこの春から自衛隊パイロットの民間企業への転職を再開したが、どこまでカバーできるか未知数だ。
6月末には中国のLCCの春秋航空などが出資する春秋航空日本が国内線に参入する。昨年撤退したマレーシアのエアアジアも2015年をめどに国内線への再参入を目指しているように、LCC市場の競争は一段と過熱する見通しで、パイロット不足の解消は容易でないと見る関係者が多い。