個人あて相談メールをうっかり全社メールで送信してしまった――想像するだけで背筋の寒くなる事態だが、上司のこんなうっかりミスをきっかけに「無料ラスベガス旅行」の権利が舞い込んできた、という椿事がイギリスで起きていた。
英BBC(電子版)が2014年5月22日にネット上の流行をあつかう「TRENDINGS」の記事でとりあげたところによると、今回の事件の主役はグレッグ・ヒースリップさんだ。TOPSHOP(トップショップ)やBHSといったブランドを擁するイギリス最大のファッションチェーン「アルカディアグループ」の警備員として働いている。
「休暇に難色」メールを3500人に送信
きっかけは、彼が休暇申請を上司に送ったことだ。その申請について上司が同僚に相談しようと転送したメールが、グループ従業員全員宛になってしまった。グループの従業員数は公式サイトによると、1000人以上。英Metro(メトロ)紙(電子版、24日付)によると約3500人の目にそのメールが触れることになってしまったのだという。
メールがどういった文面だったかの詳細は明かされていないが、どうやら上司が休暇付与に難色を示していると読める内容だったらしい。メトロ紙(23日付)によると、まず何十人もの従業員が「ネタ返信」をおこなったため、同社メールサーバーに負荷がかかり、落ちる寸前まで追いやられた。その後、メールを受け取った従業員の一人が「#GiveGregTheHoliday」(グレッグに休暇をやってくれ)というハッシュタグをつけてツイッターに投稿をおこなった。すると「休暇を取れない」という事態に同情が集まったのか、このハッシュタグはまたたくまにイギリスのトレンドでトップ入りとなり、このタグを含んだ2000以上のツイートが書き込まれることとなった。
結局、「妻と生後20か月の娘を連れて遊園地に行くつもりです」
騒ぎは各企業のマーケティング担当者の耳にも及び、整髪メーカーのVO5は「鞄に詰め込めるだけ持っていきなよ」と自社製品のプレゼントを宣言、続々と彼に対する寄付の名乗りが上がった。会社宛に荷物が送り届けられたという。中には「誰かグレッグを探し出すのを手伝ってくれませんか?本当に彼をラスベガスに招待したいのです」とまでツイートする旅行会社も。ただし、同社がBBCにこたえたところでは、彼は申し出を断ったそうだ。
ところで、ヒースリップさんは休暇をとれるのか。アルカディアグループの担当者がBBCに答えたところによると、「メールには彼が休暇を取得できないようにかかれていたかもしれないが、これは間違って送られたもので、彼はちゃんと休暇を取得できる。休暇申請は実際のところ、すでにシステム上承認され、グレッグは休暇を取ることだろう」という。ヒースリップさんも現地時間24日、英Daily Mail紙(電子版)の取材に対して、まだ事態に驚いていると話しつつ、「ただ、2日間の休みがほしかっただけなんです。そしていま取得することができました。妻と生後20か月の娘を連れて遊園地に行くつもりです」と計画を明かしている。
ヒースリップさんはまた、今回たくさんの寄付が集まっていることについて「どれも必要ありません。すべて癌にかかった子どものための基金に寄付するつもりです」とも話しているそうだ。