初夏のように気温が上昇し、2014年もビールのおいしい季節が到来。そうした中で、「プレミアムビール」の人気が上昇している。
大手百貨店のお中元商戦でも、「定番」ともいえるビールに注目。なかでも、ギフトでは日常よりも高級なものを贈りたいという心理が働き、「プレミアムビール」に手を伸ばす人も増えているようだ。
プレミアムビール、前年比1割増、シェア過去最大の15%に
ビール市場は、長く苦戦が続いている。ビール大手によると、2013年のビール類出荷量(「第三のビール」を含む)は、前年比1.0%減の4億3357万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で、2005年から9年連続して過去最低を更新した。
内訳は、ビールが1.7%減の2億1668万ケース。発泡酒は6.3%減の5868万ケース。半面、低価格の第3のビールは2.0%増の1億5819万ケースで過去最高を記録。全体に占める割合も36.5%と過去最高になった。
ビール市場は、第3のビールの売り上げがビールや発泡酒を「補てん」する状況が続いている。
そうした中で、ビールはここ最近、家庭用こそ振るわないが、高級ビールやギフトは伸びている。減少を続けるビール市場にあって人気上昇中なのが、原料や醸造方法にある種のこだわりをもたせた、高級志向の「プレミアムビール」だ。
プレミアムビールは、サッポロビールの「ヱビスビール」がその代表格ともいえるが、他には2005~07年まで、日本のビールとして初めてモンドセレクション最高金賞を受賞したサントリー酒類の「ザ・プレミアム・モルツ」がある。
最近では、サントリー酒類の「ザ・プレミアム・モルツ 香るプレミアム」や、キリンビールの「一番搾りプレミアム」、サッポロビールの「薫り華やぐヱビス」、アサヒビールが2014年2月に投入した「スーパードライ ドライプレミアム」がある。
サントリー酒類の「プレミアムビールに関する消費者飲用動向調査」(2014年5月19日公表、対象は20~59歳の男女1000人のインターネット調査)によると、プレミアムビール市場は2014年も前年比で1割程度伸びる見込みで、ビール市場におけるプレミアムビール市場のシェアも過去最大の15.0%に拡大するとみている。
ちなみに、プレミアムビール市場でトップシェアを誇る「ザ・プレミアム・モルツ」は、2013年に1767万ケース(前年比7.0%増)と10年連続で過去最高を更新。14年は、前年比2.0%増の1800万ケースの販売を目指している。
ふだんは「第3のビール」、祝い事には「プレミアム」
前出のサントリー酒類の調べでは、家庭でプレミアムビールを飲む回数の増減を聞いたところ、1年前と比較して「増えた」と答えた人は40.8%にのぼった。また、4月の消費税増税後にプレミアムビールを飲むことが増えるかの問いには、9割以上が「増えていくと思う」もしくは「あまり変わらないと思う」と答えた。
プレミアムビールが人気なのは、景気の回復傾向による後押しが強いようだ。
一方、プレミアムビールは、男性が父の日や、お中元やお歳暮のギフトとして、もらってうれしいものの上位にある。
ビール市場では「高級」志向と「低価格」志向の2極化が進んでいるとされる。ふだんは低価格の「第3のビール」を飲んでいても、祝い事やギフトには高級感のある「プレミアムビール」を飲んだり、贈ったりしている。消費者は、この2つのビールを飲み分けているようだ。
2014年5月17日号の週刊ダイヤモンドは、「ビール4社揃って投資拡大 プレミアム覇権巡る夏の陣」と題して、今夏のお中元商戦で、ビール大手のプレミアムビールが激突するとしている。
サントリーホールディングスの「ザ・プレミアム・モルツ」は、2013年のお中元期が前年同期比5%増、13年のお歳暮期は同14%増と伸ばした。14年のお中元期は20%増の350万セットが目標。他社の参入もあって競争が激しくなる中で、「目標達成に向けて、頑張っているところです」と話している。