ソニーの経営陣が崖っぷちに立たされている。2014年3月期の連結純損益は1283億円の巨額赤字を計上。2015年3月期も500億円の赤字が続く見通しだ。
パソコン「VAIO」の撤退や、テレビの分社化などで「うみ」を出し切り、不振のエレクトロニクス部門を立て直す考えだが、シナリオ通り「V字回復」できるのか。
主力のエレクトロニクス事業がふるわない
「2年続けて最終赤字となることは、大変申し訳なく思っている。環境変化への対応力とスピードが不足していた」
2014年5月22日に開かれた経営方針説明会は、平井一夫社長の謝罪と反省から始まった。
ソニーは近年、赤字を垂れ流してきた。リーマン・ショックがあった2009年3月期から4期連続で純損失を計上。2013年3月期は黒字に転換したが、再び2期連続の赤字が続く見通しだ。本業のもうけを示す営業損益も、近年は2009年3月期、2012年3月期に赤字を出した。
それというのも、主力のエレクトロニクス事業がふるわないためだ。同事業は3期連続の営業赤字。中でもテレビ事業は10年連続で赤字が続いている。2012年4月に就任して1年余りの平井社長は、2014年3月期にテレビ事業を黒字化させると「公約」したが、達成できなかった。
エレクトロニクス事業の不振を、好調な金融、映画・音楽が補ってきたわけだが、市場では「非エレキ部門の調子が良いため、エレキ部門の改革が遅れた」(アナリスト)との見方が多い。
後手に回ったソニーは今年2月、PC事業からの撤退と、テレビ事業の分社化を発表。販売会社や本社の経費削減にも取り組み、2014年3月期、15年3月期の2期で計3000億円以上を構造改革費用として計上する。改革によって、2016年3月期以降は年1000億円以上のコスト削減効果を見込み、4000億円規模の連結営業利益を目指せると想定している。
構造改革費用を積んで純損失を計上するのは、多くの企業が通ってきた道ではある。2014年3月期、23年ぶりに営業最高益を更新した日立製作所は、2009年3月期、7873億円の純損失を計上。パナソニックの純損失も、2012、2013年3月期の2期で計1.5兆円に達した。
PS4は好調
問題は、ソニーのV字回復シナリオが、信頼できるかどうか。ソニーは、2015年3月期、主要エレクトロニクス5部門のすべてで営業黒字を確保するという目標を掲げる。柱はスマートフォン、ゲーム機、テレビで、スマホは世界販売台数を前期の3910万台から5000万台に、「プレイステーション4(PS4)」など据え置き型ゲーム機は1460万台から1700万台に、液晶テレビは1350万台から1600万台に、それぞれ伸ばす計画だ。
確かに、昨年11月から販売を開始したPS4は、4月時点で700万台を突破。中国市場参入の道筋も見えてきた。液晶テレビも、高精細な「4Kテレビ」は、今のところソニーが優位とされる。だが、液晶テレビやスマートフォンは、韓国や欧米勢との競合が激しい分野で、先行している4Kテレビも、中国メーカーの格安製品開発が報じられるなど、優位性を保てる保証はない。
平井社長は「度重なる業績下方修正や、赤字を継続する体質を変える。構造改革をやり切る」と、引責辞任の考えはないことを強調した。本当に体質を変えられるのか。平井社長に残された時間は、そう長くないという声もあり、今期がまさに正念場になる。