国民的スナック菓子「ベビースターラーメン」で知られるおやつカンパニー(本社:三重県津市)と米投資会社カーライル・グループ(本社:ワシントンD.C.)が業務資本提携することになった。ネットでは、ハゲタカファンドが買収したなどとショックを受けていて、「3代愛したあの味を消していいのか?」「黒船から俺たちのベビースターを守れ!」などと悲鳴が上がった。
一方で専門家は、日本のスナック菓子に着眼したのは投資会社として良い判断であり、将来的におやつカンパニーは売却されるだろうが、今回の出資によって日本のスナック菓子の世界進出が始まると考えれば、菓子業界にとって明るい先鞭になるのではないか、と見ている。
ハゲタカファンドに乗っ取られたとネットで悲鳴
おやつカンパニーとカーライル・グループは2014年5月29日に「戦略的業務資本提携を行った」と発表した。出資するのはカーライル・ジャパンで、金額は書かれていないが200億円規模だと見られている。社長人事などは現状のまま。カーライルは消費財分野のノウハウとグローバル・ネットワークなどを最大限に活用して経営に深く関与、事業基盤の強化や海外展開を強力に支援しておやつカンパニーをグローバル・スナックカンパニーに育てると説明している。それではなぜこの2社が提携に至ったのか、2社ともに、
「プレスリリースに書かれていることが全てで、それ以上の公表はありません」
ということだった。
おやつカンパニーは松田産業という名で1948年に設立され、「ベビースターラーメン」は今のお爺さんの代から子供の身近なお菓子として愛されてきた。その味が忘れられずに大人になってもビールのつまみなどに選ぶ人もいる。そんな国民的スナック菓子の会社がアメリカのハゲタカファンドに売却されたとネットで話題になり、
「ぼくはベビースターでなくちゃダメなんだ!!」
「目を覚まして!おやつカンパニー!」
「売却されて味が変わるのは困る」
などといった悲鳴が上がり、なぜ海外企業に売約しなければならないのか、日本の会社ではダメだったのか、西武とサーベラスのようになってしまう、とか、
「アメリカのハゲタカファンド、日本庶民の味まで投資ゲームのおもちゃにするな!!」
などといった批判まで出た。
日本のスナック菓子が世界進出するきっかけになる
そんなカーライルとはいったいどんな投資会社なのか。東洋経済オンラインの2013年4月3日付けには安達保・日本共同代表と富岡隆臣・マネージングディレクターのインタビューが掲載されている。日本では20人のチーム全員が日本人で、投資先との信頼関係が築けます、などと説明している。カーライルが行っているのはプライベート・エクイティ・ファンド (Private Equity Fund)。一般的に「ハゲタカ」と呼ばれ過半に満たない株を取得し経営陣に対して不当な要求を突き付ける「アクティビスト・ファンド」とは違うと説明している。PEFの役割は株式未公開企業に投資し役員を派遣、経営を立て直したり育てたりすること。投資を回収し利益を上げるには上場させ株式売却する方法もあるが、中には上場がベストではない場合があり、会社によっては海外も含めた大企業の傘下に入れたり、合併させたりするケースも考えられる、と説明している。
専門家は今回の業務提携をどう見ているのか。経済評論家で楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元さんによれば、おそらくカーライル側はおやつカンパニーを育て企業価値を上げた後に売約する予定なのではないか、と見る。そして、カーライルは良い投資対象を見つけたと評価している。というのも、世界中で日本食がブームになっているが、日本が世界に発信できる文化で有望なのが食であり、「ベビースターラーメン」のように食べると癖になるようなスナック菓子も可能性が大きいという。
また、日本のスナック菓子業界の業績は悪くはないが、少子高齢化が進むため市場規模がさらに小さくなり、日本国内だけの商売では難しくなって、海外進出を進めなければならない。中小企業の場合、自社単独でグローバル化を進めるのは難しいだけに、
「海外のファンドの投資や経営ノウハウによってそうした道が開けるとなれば、それはラッキーな話です」
と説明し、日本のスナック菓子が世界に広がっていくきっかけや、業界他社がそれを参考にできる、としている。「ベビースターラーメン」が無くなったり、味が変わってしまうのではないか、というネットでの心配については、
「売れている商品の販売を続けるのは経営上において当然の話ですし、各国各様のベビースターラーメンが生まれるとすれば、それは日本のファンにとって楽しみなことでしょう」
と話している。