兵庫県西宮市が、本庁舎の市長執務室や会議室などに盗聴器が仕掛けられていないか、調査をはじめる。就任したばかりの今村岳司市長が要請した。
西宮市では、これまで庁舎内で盗聴騒ぎや盗聴器の存在を調べたことはないというが、今回は重要な政策決定を行う場の情報セキュリティーの確保のために実施するとしている。
「疑心暗鬼に陥ってるだけ…」「気持ちはわかる」
西宮市によると、今回の盗聴器の調査は、2014年5月16日に就任したばかりの今村岳司市長(41)の要請で実施することになった。市長執務室や会議室など、重要な政策決定を行う本庁舎内の数か所について、6月初旬までに調べる。具体的な調査場所は非公表という。 現在、複数の警備会社から見積もりをとっており、数十万円とみられる費用は庁舎維持管理費から支出する。
市施設保全管理課は、「今村市長が就任した当日に、市長室から依頼がありました。これまでは調査するという意識が薄かったのですが、政策の決定や合意形成の場であるわけですから、当然シビアな話が多くなりますし、必要と判断しました。(新しい市長としても)リセットして、クリーンな気持ちでスタートするということもあったと思います」と話している。
依頼した今村市長は、1999年に最年少(26歳)で市議会議員に当選して以降、4期15年にわたって務め、2014年4月20日に行われた市長選挙に当選(任期は2018年まで)した。
西宮市長は1992年以降、3代続けて市職員OBが市長に選ばれてきた。今村市長は、自民、民主、公明各党の推薦を受けた現職を破っての当選で、選挙戦では「しがらみの打破」を掲げ、当選後の記者会見では「既得権益を排除し、守るべき市民サービスを適切に行っていく」と強調。「適切な人事評価制度の導入、人件費削減に取り組む」とした市役所改革や、アサヒビール西宮工場の跡地に市立中央病院と中央体育館を移転する計画も白紙に戻す考えを示していた。
そんなことからか、インターネットでは、
「闘う市長じゃ、まわりは抵抗勢力というわけだ」
「ちょっと待て。コレ、調査前に公表したらダメじゃない? (盗聴器を)外されたり、調査後に付けられたり」
「これじゃあ、逆効果にならない??」
「単に疑心暗鬼に陥っているだけということもあるわけだが…」
といった声が寄せられているほか、西宮市議からも、
「不特定の市民に対する犯罪者扱いにならないように。支出の合理性も担保して」
「アサヒビール跡地関連の話はシビアな話が多いので、この気持ちはわからなくもない」
といったコメントがみられる。
「個人も含めれば、毎日フル稼働」の超多忙
とはいえ、実際に大阪府教育委員会では2008年、高等学校課内で盗聴器が仕掛けられているのが見つかった例がある。庁舎内に盗聴器が仕掛けられている可能性が、まったくないとは言い切れない。
大手警備会社の綜合警備保障(ALSOK)は、「情報漏えいの原因は、記録媒体の流出が目立つが、口頭や電話による情報の伝達時にもリスクがある」と指摘。情報戦争の時代にあって、「倫理と秩序を無視した盗聴行為は存在します」としている。
同社では企業などの情報漏えい対策の一環として、グループ会社の東心総合警備で「法人向け盗聴器・盗撮器探索サービス」を手がけている。
東心総合警備によると、サービスの依頼は「月4~5件、多いときには10件はあります。個人向けを含めれば、毎日2班がフル稼働して当たっている状況です」と、超多忙のようだ。
盗聴器の探索サービスの利用は、官庁や本社機能が集中する、東京・霞が関や永田町や周辺のオフィス街が多いが、地方都市でも仙台や名古屋、大阪、神戸、福岡などで増えているという。
「最近はどの企業、自治体も情報漏えいに敏感なので、増えています。多くの場合はなにかの機会に実施するようですが、なかには1回実施して以降、毎年1回必ず実施するという自治体もあります」と話している。