アパレル大手の三陽商会が英バーバリー社と結んでいた主力商品の高級ブランド「バーバリー」のライセンス契約は2015年6月末で打ち切られることになった。バーバリーが日本で本格的な直営店による事業に切り替えるためだ。
バーバリーの商品が日本から消えることはないが、三陽商会にとっては「虎の子」ともいえる存在を手放すこととなり、経営に与える影響は極めて深刻だ。
40年以上の歴史を持つ「看板」
三陽商会が生産・販売するバーバリーの商品は2015年春夏物で終了し、同年8月ごろには店頭から姿を消す。三陽商会がバーバリーと共同で開発した婦人服の「バーバリー・ブルーレーベル」と、紳士服の「バーバリー・ブラックレーベル」についてはライセンス契約を継続するものの、同年秋冬物から「バーバリー」の名前を外す。
三陽商会は1970年から三井物産と連携し、日本でバーバリーブランドの商品を企画・生産・販売してきた。既に40年以上の歴史をもつ「看板」ともいえる存在だ。実際、バーバリーの関連商品は三陽商会の連結売上高の半分を占めており、「三陽商会の屋台骨」(アパレル関係者)ともいわれる。特に、ブルーレーベルは1990年代後半に、歌手の安室奈美恵さんが好んで着用し、女子高生をはじめ若い女性の間で大ブームになったことでも知られる。
百貨店は取引縮小の意向
そもそも今回の契約打ち切りは、英バーバリー社から持ちかけられた。日本でのラグジュアリー商品市場拡大に期待すると同時に、バーバリーブランドの地位確立を目指したためで、直営店事業を本格化させたい意向が強かった。バーバリー社は今後、2016~17年の2年間で、東京・表参道や大阪に路面店を開き、百貨店の出店も強化する方針で、日本での売上高を3年間で現在の4倍に当たる約1億ポンド(約170億円)超に引き上げたいとの計画も表明している。
これに対し、三陽商会が直面する環境は厳しい。三陽商会はライセンス契約打ち切りの発表と同時に中期経営計画を発表。「ポール・スチュアート」など他のブランドの強化に努め、バーバリーの売り上げがなくなることなどで2016年12月期に850億円まで減少する売上高(2013年12月期比約2割減)を、2018年12月期には1000億円まで回復させるとの目標を掲げた。
しかし、ある老舗百貨店は「バーバリーがなくなれば、三陽商会との取引を縮小せざるを得ない。他の大手百貨店も事情は同じだろう」と話す。三陽商会にとっては、バーバリーの穴をいかに埋めることができるか、経営の正念場を迎えることになる。