インターネットのグルメ情報サービスで、新興勢力が伸びている。その代表格が「Retty(レッティ)」だ。登録会員の口コミによる飲食店情報が人気で、月間利用者数は過去1年間で10倍増を達成した。
競合には「食べログ」をはじめとする既存のサービスに加えて、米国発の「Yelp(イェルプ)」など「海外勢」の進出もある。成長のカギは「スマホ特化」にありそうだ。
「自称日本一ラーメンを食べた男」も情報提供
レッティの最大の特徴は、「実名ユーザーによる『おすすめの口コミ』が集まる」点だ。スマートフォン(スマホ)のアプリを使ってみると、掲載されている店の感想や体験記は、匿名ではなく「名出し」の登録ユーザーが書いている。かなり詳しい書き込みが多い印象で、メニューの金額や味といった基本情報だけでなく、調理法、使われている食材、店の広さなど幅広い。
レビューを書いた本人の自己紹介文や行ったことのある店、といったプロフィル情報がまとまっており、投稿者の「顔」が見える仕組みだ。レッティが選ぶ「公認ユーザー」もいる。「自称日本一ラーメンを食べた男」「延べ2000軒を食したビジネスマン」といった「グルメ界の著名人」が、自身の体験をつづっている。投稿者が勧める店を探す、あるいは地域や食のジャンル、「ランチ」「デート」といったシチュエーションなど、自分の都合に合わせた探し方も、もちろん可能だ。また自らが投稿者となり、実際に足を運んだ好みの店のコメントを増やしていけば、自動的に自分の「お気に入り店リスト」ができる。
フェイスブックやツイッターとも連動。例えばフェイスブック上で実際の知人がレッティに店の感想を書き込んでいれば、「あの人の情報なら間違いない」と一定の信頼性が担保できそうだ。
2011年6月のサービス開始から順調に会員数を伸ばし、2013年4月に29万人、2014年4月には300万人を突破した。1年で10倍強増えたことになる。レッティ代表取締役の武田和也氏はJ-CASTニュースの取材に、「口コミを含め情報が拡充して好みの店を探せるサービスとして進化してきたことで、利用者の満足度が高まってきたのではないでしょうか」と、急成長の背景を分析した。
人気ランキングではなく「自分に合った店探し」を重視
レッティのもうひとつの特徴は、立ち上げ当初からスマホに特化してきた点だ。パソコン向けにもサイトを運営するが、スマホのアクセスが9割に達する。「スマホ世代に誕生したグルメサイトは、レッティが第1号です」と武田氏。スマホでの利用を想定して、手軽に店情報を書き込める、必要な情報に素早くたどり着けるといった点を工夫していると話す。
ネットのグルメ情報サイトは既に「ぐるなび」「食べログ」といった大手がある。2014年4月には、米国で人気の「Yelp」が日本に上陸した。広く地域情報をカバーするため、厳密には全く同じではないが、飲食店情報では領域が重なってくる。投稿者が基本的に顔写真を公開した実名なのも、レッティと同じだ。これらのライバルと、どう差別化を図っていくのか。
武田氏が強調したのは、「食の好みは人それぞれ。そこで重視するのが、個々のユーザー自身が好みに合った店を探し出せるサービス」だ。レッティの投稿を見ると詳細な書き込みが多い。これは「自分の好みにこだわりが強い人が多いため」とみる。こうした内容が蓄積していけば、「これが食べたい」「この場所で探したい」という場合に的確な「アドバイス」をレッティ経由で得やすくなるだろう。また武田氏は、「ぐるなび」「食べログ」の場合、店探しの際にランキングが指標となりやすい点を指摘する。「星が4つあるからここに行こう」と考える人は少なくないはずだ。レッティはこうした方式とは一線を画する。
コンピューターソフト開発のジャストシステムが2014年5月16日に発表した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2014年4月度)」に、ユーザーの投稿から飲食店を探せる「キュレーション型グルメアプリ」の利用状況の調査結果がある。調査対象の7つのサービスの中で、レッティは最も利用者の割合が高かった。ただしその数字は3.7%で、「名前は知っているが利用したことがない」を合わせても8.4%にとどまる。有効回答者がスマホ所有者593人とやや少ないが、それでも一般的な認知度は高いとは言えない。裏を返せば、今後も成長する余地は大きいことになる。