震災で壊滅的な打撃を受けた大槌町では、多くの集落が消え去り、コミュニティーが崩壊しました。仮設住宅に移った被災者は、盛り土した元の場所や、元の場所から離れた高台に自宅を新築したり、町が建設した災害公営住宅に入居したりしながら、また、新たなコミュニティーづくりに参加することになります。復興まちづくりの事業は、道路や建物を造ることだけではなく、住民同士の絆を再び紡ぎ直す作業でもあるのです。
大槌町の災害公営住宅第1号として昨年8月に完成した「大ケ口一丁目町営住宅」の自治会設立総会が5月18日に町営住宅の集会所で開かれました。会長に佐々木一雄さん(51)を選び、ごみ置き場の清掃、団地内の草刈り、盆踊りや新年会の開催など、今年度の事業を決めました。
この町営住宅は地域住宅計画推進協議会が主催する2013年度の第8回地域住宅計画賞(作品部門)を受賞しました。地元産の木材を利用し、周辺の町並みになじむ低層の木造和風住宅をデザインした点が評価されました。入居者は70世帯。仮設住宅から転居し、初めて顔を合わせた被災者も多く、新たなコミュニティーづくりが課題になっていました。入居開始以来、交流会や新年会、幹事会、班別集会を重ねながら交流を深め、自治会の設立総会開催へとこぎつけました。
設立総会には委任状を含めてほとんどの住民が出席しました。会長、副会長を決め、▽月に1回役員会を開催する▽ゴミ収集日にごみ置場を清掃する▽7月と10月に草刈りをする▽高齢者に声をかける「見回り隊」の編成を検討する▽8月に盆踊り、1月に新年会を開く、ことを決めました。
会長に選ばれた佐々木さんは「高齢者の方が多く住んでおり、自治会結成をきっかけに、お年寄りを支える態勢を築き上げたい」と抱負を語りました。
大槌町内の災害公営住宅は最終的に980戸の建設が計画されています。2013年度に125戸が建設され、今年度は187戸の建設が予定されています。入居から約8カ月かかった大ケ口一丁目町営住宅での自治会結成は、これからの新たなコミュニティーづくりのモデルケースになることでしょう。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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