消費税率の引き上げで2014年4月の売り上げが軒並み減っている百貨店にあって、銀座三越が「一人」プラスを維持した。
その要因は、外国人観光客が売り上げに大きく貢献したためだ。
外国人観光客の免税売上高、前年比2倍近くに
高島屋日本橋店15.6%減、新宿タカシマヤ10.5%減、大丸東京店3.7%減、松坂屋上野店22.4%減、伊勢丹新宿本店11.4%減、三越日本橋本店9.6%減……
2014年4月の全国百貨店売上高(既存店ベース)は、前年同月に比べて12%減の4172億円と6か月ぶりのマイナス。日本百貨店協会が当初予想していた減少幅よりも小さかったとはいえ、消費増税前の駆け込み需要の反動で、高額品や化粧品などで大きく売り上げが落ち込んだ。
そうした中で、孤軍奮闘したのが三越銀座店。1.1%増と、プラスを維持した。伊勢丹新宿本店などを有する三越伊勢丹ホールディングス(HD)の中でも、前年実績を上回ったのは「銀座三越」だけ。日本人による売り上げが減ったなか、外国人観光客の免税品(菓子、食品、化粧品、医薬品などは免税対象外)の売り上げが、前年同月に比べて2倍近くに増えたことが寄与した。
三越伊勢丹HDによると、2013年の1年間の免税品売り上げが、売り上げ全体に占める割合は5%程度。それが「4月は10%超を占めました」と話す。
東京・銀座という立地もあってか、銀座三越はもともと外国人観光客の来店が多い。同社の中でも「外国人観光客の売り上げをけん引しています」という。
売上高・来店客は圧倒的に中国人観光客が多く、台湾、タイと続く。三越伊勢丹HDでは「外国人観光客がストレスなく買い物できるように」と、1階正面入り口に英語と中国語を話せるスタッフを配置した専用の外国語対応カウンターを置き、また外貨両替機も設けた。
4~5月は銀座三越だけに、食品などのおみやげ品をセレクションした「手土産カタログ」の英語版と中国版を用意して配布するなど、受け入れ態勢を強化。こうした取り組みが実を結んだといえそうだ。
10月から食品や化粧品も免税に 売り上げ増に期待
日本百貨店協会が2014年5月20日に発表した4月の外国人観光客の売上高(免税手続きベース、調査対象46店)は、60億9238万円。前年同月に比べて54.3%も増えた。来店客数も64.8%増の7万7731人だった。
円安の進行や東南アジアのビザの緩和措置、格安航空(LCC)の新規就航などを背景に、訪日外国人観光客は2013年、前年比24%増の1036万人と政府が目標とした1000万人を突破した。
それに伴い、2013年の外国人観光客による免税売上高も384億円(調査対象43店)と約2倍に急伸。一人あたりの購買単価は7万8378円で、前年に比べて減ったものの、百貨店にとっては「売り上げが計算できる」お客になっている。
なかでも中国からの観光客は前年に比べて減少したものの、買い物への意欲は旺盛で売上高では他を圧倒しているという。
一方、政府は2014年10月から、外国人観光客が買い物をするときに消費税を免税にする商品を、家電などに限定せず、これまで対象外だった食料品や化粧品などあらゆる物品に広げることにした。
おみやげ品として人気がある地域の特産品やお菓子、化粧品などが免税となることで売り上げ増が期待できる。今後は外国人観光客の取り込みが、百貨店の売り上げをますます左右することになりそうだ。