調理師や栄養士を養成する埼玉県の私立専門学校が、長年にわたって外国人の入学を拒否していたことが明らかになった。
県が方針を撤回するように求めても「学校の方針」だとして応じてこなかったが、毎日新聞がこの事実を報じ、厚労相が調査に乗り出す方針を表明すると一転、方針を撤回した。
「外国人の入学は出来ません。これは本校の方針です」
外国人の受験を拒否していたのは、学校法人今昌学園(今井明巨理事長)が運営する埼玉県調理師専門学校と同栄養専門学校、同製菓専門学校の3校。2015年4月入学者向けの募集要項に、「外国人の入学は出来ません」という項目があり、
「外国人の入学は出来ません。これは本校の方針です。外国人の受け入れはしませんので御注意ください」
と明記している。これらの記述は少なくとも13年4月入学者向けの要項から存在しており、方針自体はさらに前からあったようだ。
なお、これらの記載は紙の要項にのみ存在しており、ウェブサイトにはない。
埼玉県の学事課はこの記述を把握し、13年1月と8月の2回にわたって「本人の能力や適性で公正に選抜してほしい」などと2度にわたって文書で学校法人に改善を求めたが、学校法人側は「学校の方針」などと詳しい理由を示さないまま拒否したという。
行政が私立学校に対して外国人の入学を認めさせる法的根拠は存在しないため、「お願い」ベースにならざるをえない。そのため、埼玉県にとっては打つ手がない状態が続いてきた。
厚労相「差別的な取り扱いがあるとすれば望ましくない」
だが、この件を14年5月23日に毎日新聞が報じると状況は一転。
厚生省はこの学校を、調理師免許を取得するための養成施設として指定しているが、田村憲久厚労相は午前の会見で、
「差別的な取り扱いがあるとすれば、それは望ましくないと思う。ただ、どういう事情なのかを含めて背景を調査しなければならない」
と調査に乗り出す考えを明らかにした。
その後、今井理事長は厚労省や埼玉県に対して、入学拒否を撤回する方針を電話で伝えた。電話では、
「態度がかたくなだった」
などと反省の弁を述べていたという。
埼玉県調理師専門学校に対して外国人入学を拒否してきた経緯について問い合わせたが、
「理事長以外に取材に対応できるものがいない」
と話している。理事長は取材に対応する予定はないといい、事実上の取材拒否だ。