「弁護団が肩入れしすぎたので、増長したのではないか」。パソコン遠隔操作の犯行などを一転して認めた片山祐輔被告(32)の弁護団に対し、ネット上ではこんな声も出て、議論になっている。
片山祐輔被告が逮捕されてから、主任弁護人の佐藤博史弁護士を中心に、弁護団は、法廷内外で無実を訴え続けた。
「肩入れしすぎだ」と一部で疑問視する声
証拠がまったく出されていないというのがその論拠で、自分に都合のいい情報だけをマスコミにリークしていると、検察側を一貫して批判し続けた。可視化しなければ取り調べに応じないと、捜査協力を拒む姿勢さえ見せていた。
「完全にだまされた」。それが一転、佐藤弁護士が2014年5月20日の会見でこう認める事態になった。しかし、「『やっていない』という人を信じるのが職業倫理」だとして、これまでの対応を否定することはなかった。否認している容疑者が「実はやってました」と告白することに何度も遭遇しており、それを元に弁護するのが仕事だからだという。もし「真犯人」メールで足が付くことがなければ、今後も無実を訴え続けただろうともしている。
こうした弁護団の対応ぶりについては、ネット上で、疑問を投げかける向きも一部ではある。「肩入れしすぎだ」「依頼人に騙されたなんて言ったら絶対に駄目だろ」「無責任極まりない」「誤認逮捕された人の気持ちを考えると憤りをかんじます」といった意見だ。
これに対し、司法関係者などからは、弁護団が結果として罪を認めた片山被告を擁護したことは、仕方がないとの声が多い。
元東京地検検事の大澤孝征弁護士は、「批判は、ある程度仕方がなく、受け入れないといけない」としながらも、こう話す。
「被告は無実だと信じたのはある意味で当然」
「被告に裏切られたからと言って、法律家の資格がないと短絡的には言えません。弁護士は、万能な能力を持っているわけではなく、刑事弁護の経験に照らし、被告は無実だと信じたのはある意味で当然だと思います。これでその評価や能力に疑問符が付くわけではなく、むしろ気の毒であり、無念さがあるのではないでしょうか」
無実の証拠がない限り、情状弁護に徹するべきとの声も一部であるが、大澤孝征弁護士は、「そうはいきませんよ。有罪証明は検事が行うもので、弁護士は、疑わしきは被告人の利益に、を考える立場です。疑い出すとキリがありませんから」と言う。
証拠がありながら無罪を主張するといった場合についても、こう言う。
「有罪と思ったら、弁護士は、もちろん説得します。それでも無罪というなら私は降りますが、国選弁護人の場合は、そうはいきません。被告の命令ですので逆らえず、その意向に沿った弁護をしなくてはならなくなります。以前、有罪と言って懲戒された弁護士もおり、弁護を尽くすべきとなっています。こうした場合に、法廷良心で仕事できないのは、やむを得ないことですね」
板倉宏日大名誉教授(刑法)も、同様な意見だ。
「佐藤博史弁護士は、数々のえん罪事件を手がけ、刑事弁護では定評のある方です。今回の弁護手法は、これはこれでよいと思います。依頼人がいるので仕方がなく、不審なところを見抜くべきだったとも言えません。情状弁護だけすればいいというのは違いますね」