地下水くみ上げて海に放出する作業は始まったが……
1~3号機では、核燃料を冷やすために大量の水を流し込んでいる。しかし圧力容器に穴が開いていて漏れ出しタービン建屋地下にたまっているため、長くつないだ配管を通して移送し、放射性セシウムを取り除く処理を施した後に再び冷却水として使用する循環システムを運用している。だが一方で、1日約400トンの地下水が原子炉建屋に流れ込み、汚染水化している。
今秋ALPSが増設されると、全系統が稼働すれば最大処理量は1500トンになるという。加えて5月21日、原子炉建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に放出する作業が始まった。初日は561トンの排水を完了。順調に進めば、1日当たり最大100トン分の地下水を減らせるという。
ただ地下水バイパスの「作戦」は始まったばかりで、当面は様子を見る必要があるだろう。さらにALPSの場合は、現状の不安定さを見ると増設後に常時フル回転できるのか懸念が残る。さらに言えば、「処理後」の水の取り扱いが現時点で決まっていないのも気になる点だ。トリチウムの濃度を基準値以下に薄めて海洋に放出すべきとの意見もあるが、現段階では地元住民や漁業関係者の反対もあり、実施していない。「汚染水ゼロ」を実現するには、シナリオ通りに事が運んだとしても遠い道のりと言えそうだ。