鉄鋼国内最大手、新日鉄住金の2014年3月期連結決算は、最終(当期)損益が2427億円の黒字となり、旧新日本製鉄と旧住友金属工業の単純合計ベースである前期(2584億円の赤字)から大幅な黒字転換を達成した。
自動車や首都圏マンション建築などの国内需要が伸びたうえ、旧2社の「統合効果」が加わった結果といえる。ただアジアでの鋼材の供給過剰など鉄鋼業界をとりまく環境は依然厳しく、引き続き統合効果を維持しつつ収益を伸ばせるか、課題も多い。
政府の「国土強靱化」政策に伴う公共事業も堅調
2014年5月9日の発表によると、売上高は5兆5161億円で旧2社の単純合計比では9%増、経常利益は3610億円で同じ基準で約4倍に膨らんだ。景気の好調さや円高基調の是正、14年4月の消費税増税を前にした駆け込み需要に加え、政府の「国土強靱化」政策に伴う公共事業も堅調で、建設、製造業ともに国内需要が拡大。同社はほぼフル操業の生産状況が続いたといい、粗鋼生産量は前期比212万トン増の4567万トン(連結ではなく単独ベース)に上ったほか、鋼材出荷量も105万トン増の4202万トンとなった。鋼材価格も上がり、1トン当たり5900円高い8万6000円となった。
新日鉄住金は2012年10月、激しい競争が展開される国際市場で勝ち抜くためのコスト競争力の強化や財務体質の改善などを目指し、旧新日鉄と旧住金が合併して発足。以降、旧2社の主力である鉄鋼を中心に事業整理を急ピッチで進めてきた。
中国や韓国が鋼材生産を増強、過剰生産の流れ止まらず
この結果、2014年3月期には統合効果約300億円を含め、計約1200億円のコスト削減を成し遂げたといい、収益の大幅な押し上げ要因となった。新日鉄住金は「シナジー部分は十分達成できた」としており、2015年3月期にも統合効果を含め計約1000億円のコスト削減を目指す方針だ。
ただ鉄鋼業界が置かれている環境は厳しさを増している。2015年3月期も「自動車生産などは堅調で、国内需要は比較的順調に推移する可能性が高い」(鉄鋼関係者)との見方は強いものの、消費増税を控えた駆け込み需要という2014年3月期の特殊要因はなくなり、国内需要が大きく拡大していくとは見込めない状況だ。他方、世界市場では中国や韓国が鋼材生産を増強し続けており、過剰生産の流れを止める手立てはない。実際、新日鉄住金は原料価格の動向などが不透明だとして、2015年3月期の見通しを公表しなかった。
新日鉄住金は生産体制の効率化を進めているとはいえ、国内拠点が16カ所にのぼり、韓国内で2拠点に集約したポスコなどに比べ、固定費などの差がなお大きいと指摘される。高品質の鋼材をいかに低コストで生産できるか。復調したとはいえ、新日鉄住金の課題は明白だ。