アルバイト店員の不足で一部店舗が閉店に追い込まれている牛丼チェーン大手の「すき家」が、同じゼンショーホールディングス(HD)傘下の「なか卯」に、アルバイト店員の「ヘルプ」を求めているとの情報が、ネットに書き込まれた。
ただ、ゼンショーHDは「所属が違うので、ありえない」と否定しており、真相は不明だ。
「なんで俺らが犠牲にならんとあかんねん」
インターネットの掲示板にあるカキコミには、「なか卯」のある店舗が6月に閉店するのに伴い、マネージャーから直に「(閉店の)翌日から『近隣地域のすき家で勤務してくれ』って!」などと言い渡された、とある。
さらに、「確認したところ、全国で60店ほどすき家の人を確保するためそうするんだと。なんで俺らが犠牲にならんとあかんねん」と、綴られている。
これを読んだ人からは、1000を超えるレスポンスが寄せられ、
「『近隣地域のすき家で勤務してくれ』って! こんなのある??」
「契約違反ではないか」
といった声がある。
たしかに、なか卯はすき家と同じゼンショーHD傘下のグループ会社ではあるが、すき家とは別の会社だ。いくら店舗が近いからといって、アルバイト店員の不足を融通することができるのだろうか――。ゼンショーHDに聞いてみた。
すると、「一般的には、所属が違うのですから、そのようなことはありません。たとえば、なか卯を辞めてから、すき家の面接を受けて採用し直すというのであれば可能ですが。(なか卯に所属しているのであれば)手続き上、すき家では働けません」と話す。
そのうえで、「すき家に限らず、いまは人材の確保が厳しくなっています。人手不足なのは確かですが、店舗ごとに(アルバイト店員を)融通し合うようなことはありません」と、否定した。
加えて、「なか卯」は2014年2月に、40年も扱ってきた牛丼の販売を打ち切り、「牛すき丼」(並盛350円)の販売に切り替えたばかり。なか卯に牛丼以外の丼ものやうどん関連に集中し、牛丼はすき家に一本化することで差別化。「業態が異なる」と、強調する。
5月14日現在でも、28か店が休業中
とはいえ、最近の「すき家」のアルバイト店員の不足は、きわめて深刻だ。正式なものではないにせよ、「融通」の話が出てきても不思議ではない。
そもそも、すき家は接客から調理まで、店舗を一人で切り盛りさせる「ワンオペレーション(ワンオペ)」が問題視されてきた。深夜帯でもアルバイト一人で店を運営させたため、安全面でも支障をきたした。
これに、2014年2月に発売した「牛すき鍋定食」のメニューが、忙しさに拍車をかけた。すき家の場合、吉野家や松屋と比べて牛丼メニューが多いことが「売り」だが、そこに時間と手間のかかる鍋メニューを投入したことで店が回らなくなり、アルバイト店員の不満が一気に噴き出した。
アルバイト店員が大量に辞めたことで、2月から4月にかけて120店以上が一時休業。5月14日現在でも、28か店で休業しているという。
ゼンショーHDの2014年3月期連結決算によると、売上高は前期比12%増の4683億円と増収。牛丼カテゴリーの売上高も1.0%増え、1799億円だった。
しかし、営業利益は45%減の81億円、最終利益は78%減の11億円と、大幅な減益。アベノミクスによる円安で、牛肉の仕入れ価格や電気代などが上昇。さらに人件費の負担も重なり、既存店売上高が減少したことが響いている。
5月14日の決算発表では、すき家の人員不足による休業の影響について、売上高で5億円、営業利益2億円あったと明かした。