ノーヒットノーランをあとアウト1つで逃したことで大きな話題になったレンジャースのダルビッシュ有。ところが、とっくに記録は失っていた、と大リーグ機構が訂正する珍事が起きた。
その試合以来の登板では敗戦投手。今季は不運がつきまとっている?
最後の打者がアウトだったら記録訂正なしだったか
「あと1人で記録を逃す新記録を作るか」
ダルビッシュがこのコメントを発したのは2014年5月9日のレッドソックス戦の試合後。9回二死まで失策1、四球2の走者を出しただけだったが、ここでオルティーズに安打され、ノーヒットノーランの夢は消えた。
昨年もアストロズ戦で27人目に安打を許し、パーフェクトゲームの大記録を逃していた。それだけに今年はなおさら話題になった。
ところが…。そのレッドソックス戦のダルビッシュの投球に訂正が発表された。
「失策を安打と訂正する」
その場面は7回二死からのオルティーズの当たり。二塁手と右翼手の間に落ちた飛球を野手が触れなかったにもかかわらず「右翼手が捕れる打球」として公式記録は「失策」。試合後、オルティーズが「あれは野手が触れていないのだからヒットだ」と抗議。それを受け入れ、14日に「安打」と変えた。
ダルビッシュのノーヒットは6回二死までとなったのである。最後の緊張した場面、試合後の騒ぎはいったいなんだったのか。
最後のオルティーズがアウトになっていたら、おそらく訂正はなかっただろう。どうせ記録は成らなかったし、安打が1本増えても影響はないということなのだが、かなりのご都合主義ではある。
開幕投手「ドタキャン」が不運の始まり?
そのダルビッシュ、くだんの試合のあと、16日のブルージェイズ戦に先発。この日も順調に相手を抑えていたのだが、味方打線も打てない。7回まで両軍ともに無得点の投手戦となった。
8回表、ブルージェイズは先頭から連続バント安打を決めてチャンスを作った。一死一、三塁となったところでダルビッシュは右翼線に長打を浴び2点を失い、好投もむなしく2敗目を喫した。
「(タイムリーは)いい球だったけど、いい感じで打たれた。目の前の打者に集中して投げた」
試合後はいつものように淡々として振り返った。しかし、勝ちゲームに勝てないというのは投手にとってつらい。
思えば、今シーズンのダルビッシュは運がないようだ。オープン戦の終盤、ワシントン監督から「開幕投手はダルビッシュ」とエースの座を与えられたのだが、首を捻挫して開幕戦はなし。来年の開幕戦に投げられるかどうか分からないだけに、数少ないチャンスを逸したのは痛い。次が例のノーヒットノーラン成るかで盛り上がりながら果たせなかった試合。しかも訂正付きという白けた結果だ。勝ち星が伸びず、順調なヤンキースの田中将大と対照的である。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)