トップ候補を自ら選び、育てる
とはいえ、宮内氏がトップを退く時期については、社内でも「まだ先」という見方が多く、「生涯現役を貫くのではないか」(同社幹部)との声もあった。井上氏は、5月8日の記者会見の数週間前に宮内氏に呼び出され、「覚悟はできているか」と問われて「できています」と答えたというが、記者会見では「あと3年は宮内がトップを続けると理解していた。時期的に早かったという印象だ」と明かした。
宮内氏は経営の最前線からは引くものの、「これまで目の前の課題に追われてできなかった重要なことに取り組みたい」とますます意気軒高。具体的には、オリックスの長期戦略の検討や人材育成、取引先との関係強化などを挙げた。「次の世代(の優秀な人材)をピックアップし、育成することもできるかもしれない」と語り、井上氏の後に続くトップ候補を自ら選び、育てることにも意欲を見せる。
そもそもオリックスは1964年、商社の日綿実業(現双日)にいた宮内氏が創業メンバーとしてかかわり、設立された。日本では珍しかったリース業を根付かせただけでなく、保険や銀行、事業再生、エネルギー事業、水族館運営まで手がけるユニークな総合金融会社に育て上げた。宮内氏は「バブル崩壊やリーマン・ショックなど何度も危機に見舞われながら、一度も赤字に陥らなかったことが誇り」と胸を張る。