オリックスの経営トップを33年にわたって務めた宮内義彦会長兼グループ最高経営責任者(CEO)が、2014年6月の株主総会をもって取締役を含む現在の役職から退く。
後任のグループCEOには井上亮社長兼グループ共同CEO(61)が昇格し、宮内氏は「シニア・チェアマン」という新たな肩書で後見役となる。宮内氏は退任発表会見で「院政」をきっぱりと否定したものの、同社を総合金融会社に育て上げた「カリスマ」だけに、社内へ引き続き強い影響力を発揮しそうだ。
体力の続く限りトップを務めたいと考えていた
「ぎりぎりまでトップに居続けることは、無責任だと考えを変えた」。宮内氏は14年5月8日、東京都内のホテルで開いた記者会見で、突然の退任発表の真意をこう説明した。
78歳という年齢ながら健康面の問題もなく、宮内氏自身、少し前までは体力の続く限りトップを務めたいと考えていた。しかし、海外出張に出かける時も、万が一のことがあった場合の対応を書き記した手紙を部下に預けていたほど、リスク管理には気を使っていた。次第に「元気な間に次の『これ』と思う人にバトンタッチする形を作ったほうが良い」と考えるようになったという。折しも同社は今春、創立50周年を迎え、2014年3月期連結決算も大幅な増収増益となった。宮内氏は記者会見で「今が次のステップに移る最高の時」と笑顔を見せた。
トップ交代の布石はあった。2014年1月、最高執行責任者(COO)だった井上氏が「共同CEO」に就任。宮内氏による後継指名であることは明らかで、この人事を機に、宮内氏から井上氏への権限委譲が進むとみられていた。