セウォル号事故、韓国経済に打撃 「消費自粛」が長期化すると…

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   300人を超す死者・行方不明者を出した韓国の旅客船「セウォル号」の沈没事故から1か月。その事故の影響が、韓国経済に波及し、暗い影を落としはじめている。

   韓国の国民は深い悲しみから「追悼ムード」一色。事故によって消費心理が萎縮し、「消費の自粛」が広がってしまったことが原因だ。

遊園地や娯楽施設は入場者が半減、修学旅行中止の損失27億円

セウォル号事故の影響で、韓国は「追悼ムード」一色。「消費自粛」が深刻化している。
セウォル号事故の影響で、韓国は「追悼ムード」一色。「消費自粛」が深刻化している。

   閉塞感が漂う韓国経済にあって、セウォル号の沈没事故が追い討ちをかけたようだ。韓国経済は、アベノミクスによる円安ウォン高などの影響で、これまで「けん引役」だった財閥系のサムスングループや現代重工業グループなどの業績が軒並み悪化。それもあって、内需も低迷が続いている。

   さらに事故によって消費の自粛ムードが広がり、サービス業の景気は明らかに後退した。韓国の聯合ニュースによると、セウォル号の事故以降、クレジットカードの使用額が大きく減少したと、企画財政省が明らかにした。クレジットカード決済額を事故前の4月前半(1~15日)と後半(16~30日)で比べると、レジャー業は前半に前年同期比12.9%増だったが、後半になると同3.6%減に落ち込んだ。ゴルフやカラオケなどの利用が減った。

   週末の遊園地の入場者数は、第4週が第2週から44.6%減り、宿泊施設は前半の10%増から後半は1%減となった。事故では修学旅行中の高校生が犠牲になったことから、他校も修学旅行を自粛したことなどが影響。修学旅行の中止に伴う損失額は276億ウォン(約27億4000万円)に達したとされる。

   4月第4週の映画館入場者数は28.8%減。娯楽施設入場客は68.3%の減少だった。旅客船の利用は41.8%増が29.9%減に大きく減った。

   飲食業では、4月前半が12.7%増えたが後半は7.3%増に、また百貨店売上高は4月第1週の4.5%増から事故後の第4週は0.2%増に、伸びが鈍った。大型スーパーも3週目以降は3.7%減と大きく落ち込んだ。

   行事やイベントなどの自粛も広がっている。

「負の連鎖」に陥る前に糸口を…

   あるシンクタンクのエコノミストは、「百貨店や外食、レジャー施設の利用は明らかに減っていますから、GDP(国内総生産)ベースでも、少なくとも4~6月期は大きく後退するでしょう」と予測。ただ、「韓国経済のけん引役だった電子製品や電子部品などの輸出はまだ堅調です。韓国は外需への依存度が高いですから、ここがどう踏みとどまるか、です」と、いまが正念場であると指摘する。

   国民の消費心理の萎縮が長期化した場合、実体経済の回復に影響が出るだけでなく、遅れれば遅れるほど、それが中小・零細企業や自営業者の経営、強いては従業員らの賃金に響いてくる懸念がある。そうなると、買いたいモノが買えなくなったり、企業も価格を引き下げたりする必要が出てくる。

   前出のエコノミストは「多くの人が亡くなっていますし、追悼の気持ちはわかるのですが…」と言葉を濁すが、「消費自粛」が長引くことで韓国経済がさらに悪化する可能性は低くないようだ。

   ちなみに、あまり比較にならないが、日本では1989年1月7日の昭和天皇の崩御のとき、直後の閣議で「歌舞音曲の自粛」が決まった。2月24日の「大喪の礼」まで「服喪」となり、華美な行事やイベントの自粛を要請した。崩御から2日間と大喪の礼当日は、多くの企業や商店、レジャー施設が臨時休業するなどで対応。大喪の礼の後、平常化した。

   また2011年3月11日の東日本大震災が起こったときも「消費自粛」が起こった。「被災者のため」を考え、イベントを中止・延期したり、外食を控えたり、テレビ番組やCMも被災者に配慮した内容に見直したりした。

   このときは、首都圏などを中心とした、「被災地の産品や製造・加工品を応援するつもりで買う」「購入金額の一部を被災地支援に役立てるキャンペーンに参加したい」といった「応援消費」をきっかけに、徐々に消費が回復に向かっていった経緯がある。

   今回の韓国の事故は、日本のこうしたケースとはやや事情が異なり、韓国社会の根幹にかかわるような構造的な問題点もあぶりだされている。自らを「三流国家」と自虐的に再定義する報道が出るなど、社会全体が自信喪失ぎみになっており、そうした心理的な影響も含めて立ち直るには時間がかかりそうだ。

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