「負の連鎖」に陥る前に糸口を…
あるシンクタンクのエコノミストは、「百貨店や外食、レジャー施設の利用は明らかに減っていますから、GDP(国内総生産)ベースでも、少なくとも4~6月期は大きく後退するでしょう」と予測。ただ、「韓国経済のけん引役だった電子製品や電子部品などの輸出はまだ堅調です。韓国は外需への依存度が高いですから、ここがどう踏みとどまるか、です」と、いまが正念場であると指摘する。
国民の消費心理の萎縮が長期化した場合、実体経済の回復に影響が出るだけでなく、遅れれば遅れるほど、それが中小・零細企業や自営業者の経営、強いては従業員らの賃金に響いてくる懸念がある。そうなると、買いたいモノが買えなくなったり、企業も価格を引き下げたりする必要が出てくる。
前出のエコノミストは「多くの人が亡くなっていますし、追悼の気持ちはわかるのですが…」と言葉を濁すが、「消費自粛」が長引くことで韓国経済がさらに悪化する可能性は低くないようだ。
ちなみに、あまり比較にならないが、日本では1989年1月7日の昭和天皇の崩御のとき、直後の閣議で「歌舞音曲の自粛」が決まった。2月24日の「大喪の礼」まで「服喪」となり、華美な行事やイベントの自粛を要請した。崩御から2日間と大喪の礼当日は、多くの企業や商店、レジャー施設が臨時休業するなどで対応。大喪の礼の後、平常化した。
また2011年3月11日の東日本大震災が起こったときも「消費自粛」が起こった。「被災者のため」を考え、イベントを中止・延期したり、外食を控えたり、テレビ番組やCMも被災者に配慮した内容に見直したりした。
このときは、首都圏などを中心とした、「被災地の産品や製造・加工品を応援するつもりで買う」「購入金額の一部を被災地支援に役立てるキャンペーンに参加したい」といった「応援消費」をきっかけに、徐々に消費が回復に向かっていった経緯がある。
今回の韓国の事故は、日本のこうしたケースとはやや事情が異なり、韓国社会の根幹にかかわるような構造的な問題点もあぶりだされている。自らを「三流国家」と自虐的に再定義する報道が出るなど、社会全体が自信喪失ぎみになっており、そうした心理的な影響も含めて立ち直るには時間がかかりそうだ。