「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が2014年5月15日、集団的自衛権の行使容認を求める報告書を政府に提出したことを受け、安倍晋三首相が同日夕方会見し、与党協議に入る方針を示した。
安倍首相は、
「憲法解釈の変更が必要と判断されれば、その点を含めて改正すべく、国民の命と暮らしを守るため、閣議決定していく」
と述べ、必要性があれば憲法解釈を変更することを明言した。
会見場にパネル2枚を持ち込んで説明
報告書では、(1)自衛のための武力行使は禁じられていない(2)国連の安全保障への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はない、との見解を示している。政府はこれに基づいて、5月20日から与党協議に入る。
安倍首相は会見場に2枚のパネルを持ち込み、日本人を輸送している米輸送艦が攻撃を受けた時に防御できるようになることや、海外で活動する平和維持活動(PKO)要員や日本のNGOが攻撃を受けた際に、PKO参加中の自衛隊が警護する「駆けつけ警護」が可能になることを説明。現状の問題を
「世界の平和のために汗を流している若い日本人を、私たちは自衛隊という能力を持った諸君がいても、守ることができない。一緒に汗を流している他国の部隊。もし逆であれば、彼らは救援に訪れる。だが、私たちはそれを断らなければならない。見捨てなければならない。おそらく、世界は驚くことだろう」
と説明し、これを解消すべきだと主張した。
「巻き込まれる」論には60年安保引き合いに反論
いわゆる「他国の戦争に巻き込まれる」論については、祖父の岸信介氏が首相在任時の1960年に日米安全保障条約が改正された際、激しい反対運動が起こったことに言及しながら、
「日米安保の改正によって、日本は戦争に巻き込まれる。散々、そう主張された。しかし、50年経ってどうだったか。この改正によって、むしろ日本の抑止力は高まり、アジア太平洋地域において、米国のプレゼンスによって、平和がより確固になっているのは日本人の常識ではないか。まさに私たちが進めていこうとしていることは、この『抑止力を高めていく』(ということ)」
と、拳を振り上げながら反論した。