牛丼チェーン「すき家」でアルバイト店員を確保できないなどの理由により、休業や営業時間を短縮する店舗が相次ぐ中、ゼンショーホールディングス社長の発言がネットで批判されている。
社長は人材が集まらない理由について「日本人は3K仕事やりたがらない」などと持論を展開したとされ、本当に労働環境を改善する気があるのか、と疑問の声が寄せられている。
「心底辛かったのはすき家が初めて」
ゼンショーホールディングスが5月14日に発表した2014年3月期連結決算は、売上高は前期比12.2%増の4683億円だったが、営業利益は44.8%減の81億円、純利益は78%減の11億円となった。スーパーの買収などにより売上は伸びた一方で、牛丼事業は食材の仕入れ値の上昇や既存店の売上減少が響いた。
すき家は現在、従業員不足や店舗改装などの理由で約180店舗を休業する異例の状況で、働きやすい店舗環境の整備を「経営の最重要課題」に設定したとアピールするなど、人材確保に躍起になっている。第三者委員会を設置して店舗や本部に調査を行い、労働環境改善の提言を行うとしている。
従業員ひとりで店内すべての業務をこなす「ワンオペ」が過酷というのはネットで定説だ。Q&Aサイトには「今までいろいろな種類の仕事をしてきましたが、心底辛かったのはすき家が初めてでした」「シフトインしたらワンオペとか、ピーク時のクルーが少なすぎるとか、精神的な負担がとても大きい」などの書き込みがある。
そうした中、同社社長の小川賢太郎氏が「日本人はだんだん3K(きつい、きたない、危険)の仕事をやりたがらなくなっている」と発言したと朝日新聞が報じた。3Kはもともと1989年ごろに流行になり、土木や建設など若者が敬遠する仕事を指していた言葉だ。飲食店を経営する小川社長が「3K」と形容したことから、ネットではさまざまな意見が寄せられている。
「自分とこの店が3Kやって認めたようなもん」
ネットでは、
「食い物を扱ってるのに3Kだってww」
「いつから飲食業が『きたない、危険』を含むようになったのか?」
「自分とこの店が3Kやって認めたようなもん」
「危険て強盗に押し入られることを言ってるのか?」
「すき家の社長は3Kを改善する気は無いのかよ」
といった声があがった。
また、「週に3-4日もやれば裕福といわなくても家族4人を養うとかが出来たくらいに稼げたからこそ皆3Kでもやった。その報酬メリットだけ散々削ってやりたがらないとかどの口が言ってんだw」など、昔の3Kは人がやりたがらない仕事だからこそ賃金が高かったという指摘も相次いだ。ゼンショーホールディングスは「世界から飢餓と貧困を撲滅する」ことを基本理念として掲げていることに触れ、「従業員のことをまず考えろよ」という意見もあった。
フリーライターで『若者を見殺しにする国』などの著書があるの赤木智弘さんも
「3Kでも将来への展望があるなら頑張るけど、時給1000円前後のバイトなんか、そこまでしてしがみつくものではない。そんな単純なことも分からないのか」
と批判している。
ゼンショーは否定
一方、ゼンショーホールディングスは15日、「本日の朝日新聞記事について」題したプレスリリースを出し報道内容を否定している。
「5月15日付の朝日新聞朝刊に、弊社会長の小川賢太郎が「『日本人はだんだん3K(きつい、きたない、危険)の仕事をやりたがらなくなっている』と嘆いている」という趣旨の記事が掲載されました。
この記事が一部で拡大解釈され、小川が「すき家」の仕事を「3K」仕事だと捉えているかのように捉えられています。 これについて、本件に関連する記者会見でのやりとりの一部始終を公開します。
記者)たとえばマックなどは「ない」と言っているんですけども、24時間というのが大変なのか、定着率とか、そういうところにも問題があったのか・・・
回答)おっしゃるように、24時間営業、深夜というものはいちばん難しいですね。24時間営業をやっているコンビニとか、スーパーマーケットとか、そうとう地方でもいま大変だという話をうかがっています。「日本人がだんだん3Kをやりたがらない」と昨日どこかの記事にも載っていましたけれども、労働力のミスマッチですよね。事務職にはなりたい人がいっぱいいて、だけど現場の仕事はミスマッチでやりたい人が少ない、という現状は確かにあると思います。
ただまあ、それを言っていてもしょうがないので、その中で経営努力をしてきたわけですし、これからもしていくということで、インフラとして機能させていくということが我々の責任だと思っています。
「日本人はだんだん3Kの仕事をやりたがらなくなっている」という部分については、記事(5月17日号の東洋経済の記事「誤解だらけの介護職~もう3Kとは言わせない」と題した特集記事)にそういう趣旨が書いてあったと述べたものであり、小川の所感を述べたものではありません。
また、文脈としても「すき家」のことではなく日本の労働市場全般に関する一般論を述べた中で語ったものです。
一部事実と異なる報道があったことは大変遺憾です。」(5月15日20時追記)