中国がベトナムやフィリピンと領有権争いを展開する南シナ海での動きを加速させており、一触即発の状態だ。ベトナムやフィリピンが主張する排他的経済水域(EEZ)内で、突然石油の掘削や暗礁の埋め立てを始めたからだ。国際的には孤立状態だが、中国側には一歩も引く気配は見えない。
ベトナムでは対中感情が悪化しており、デモで死者が出る事態に発展している。
「九段線」の内側に管轄権が及ぶと主張
中国は1950年代から南シナ海に「九段線(きゅうだんせん)」と呼ばれる9本の境界線をU字型に引き、その線の内側に自らの管轄権が及ぶと主張している。南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶと主張しているに近いが、国際法上の根拠はない。2012年5月に発行が始まった中国のICパスポートの地図でも、南シナ海の島々がすべて中国のものであるかのように描かれており、ベトナムやフィリピンが猛反発したという経緯がある。
この段階では中国の具体的な行動は確認されなかったが、ここ1か月ほどで急に情勢が緊迫化している。パラセル(西沙)諸島近海では中国が石油の掘削を開始し、中国船がベトナムの巡視船などに衝突や放水砲で攻撃を繰り返した。ベトナム政府が5月7日にこの事実を会見で発表。ベトナム政府は徹底抗戦の構えで、洋上では両国の船による放水の応酬が続いている。
ベトナムでの対中感情も急激に悪化している。反中デモの参加者の一部が暴徒化して中国企業に対する破壊活動に及んだほか、ロイター通信によると、ベトナム中部ハティン省で5月14日に起きたデモでは21人が死亡した。そのうち16人が中国人だとみられている。