今の韓国で「親日」認定されることは政治生命を失うことに等しいと言っていい。だが、朴槿恵(パク・クネ)大統領が実は親日家だとの説が、にわかに日本国内で唱えられつつある。
大型旅客船セウォル号の沈没事故で政権への批判が高まるなか、韓国国内で「親日説」が広まることになれば、朴大統領への逆風がさらに強まる可能性もある。
朴正熙大統領が推進した反日教育を受けていた
朴大統領は就任以来、いわゆる従軍慰安婦問題について外遊先で問題提起する「告げ口外交」を繰り返すなど、「反日」ともいえる振る舞いを繰り返してきた。この背景には大きく二つの説が唱えられている。ひとつが、「一般の韓国国民と同様に反日教育を受け、一般国民と同様に反日」だという説だ。
朴大統領の父親にあたる朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は日本の教育を受け、個人的には親日家だったとの評価がある。その一方で、政策面では李承晩(イ・スンマン)初代大統領の強硬な反日政策を引き継ぎ、教育面でも反日教育を推進したとされる。まさにこの世代の教育を受けたのが朴槿恵大統領だ。
二つ目が、「実は日本と親しくしたいと思っているが、韓国国内の世論を考えると『反日』を演じざるを得ない」という説だ。
この説を裏付けるひとつの材料になりそうなのが、自民党の「総裁特別補佐」の肩書きを持つ萩生田光一衆院議員の発言だ。萩生田氏は「文芸春秋」14年6月号のインタビューの中で、安倍首相と朴大統領の関係に触れている。安倍首相と朴大統領の正式な会談が初めて実現したのは、14年3月にオランダ・ハーグで行われた日米韓3か国の首脳会談だったとされる。だが、萩生田氏によると、2人は13年9月にニューヨークで行われた国連総会と、10月にインドネシア・バリ島で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議でも直接話す機会があったという。その時の様子を、萩生田氏はこう打ち明けている。
「安倍総理は『朴槿恵さんはやっぱり反日じゃないな』と話していました。日本のことはよく理解しているし、本当は日本とも仲よくしたい気持ちがあるだろうと。だけど、国内事情が許さない」