「パンダ」のマークでおなじみの「サカイ引越センター」が、2014年3月期の引っ越し事業の売上高と作業件数で、日本通運を抜いて初めてトップに躍り出た。
創業から43年。「念願であった売上げ、作業件数ともにダブルで業界ナンバーワンを達成することができ、『真の日本一』になることができました」と、自身のホームページで喜びと感謝の気持ちを記している。
転勤や住宅着工増え、引っ越し件数、単価もアップ
サカイ引越センターは2014年5月12日、14年3月期の引っ越し事業の売上高で日本通運を抜き、初めて業界首位になったと発表した。
日通の引っ越し事業の売上高が623億円、作業件数が46万7600件だったのに対し、サカイは643億円、67万2158件だった。
サカイのリサイクル事業などを含む全体の売上高は、前期比10.6%増の648億円。このうち、法人向けが16.2%増の315億円。また、インターネットを利用した見積依頼による販売実績が9.3%増の187億円だった。経常利益は19.5%増の61億円。当期純利益は過去最高の30億円(前期比17.4%増)となり、増収増益を達成した。
サカイをはじめ、2013年の引っ越し業界は好調だった。とくに転勤などが多い春シーズンにあって、この春はアベノミクスによる景況感の好転や企業の業績改善に伴って地域間の異動がここ数年よりも活発。加えて、消費増税前の駆け込み需要で住宅着工戸数が伸びており、それに伴い引っ越しも増えた。
利用者に「引っ越し時期をずらして」と訴える業者もあったほどで、引っ越し業者の3~4月の受注件数は、前年に比べて5~10%程度増えた。件数だけでなく、引っ越しが集中したことでトラックや人員が確保できず、顧客1人あたりの利用額が多くなり、利益を押し上げたとみられる。
荷物を運びにくくした空間に、独自の運転練習場で研修
引っ越しの経験がある人には覚えがあるかもしれないが、じつは引っ越しのトラブルは案外少なくない。料金がわかりづらいことに加えて、大切な食器が割れていたり、家具が凹んだり、新築の家の床がキズついたり……。
最近は引っ越し料金もインターネットで見積もりがとれるようになって便利だが、一方でそういった「評判」もまた、瞬く間に広がる。
そうした中で、サカイ引越センターはこの5年間をみても、右肩上がりで売り上げを伸ばしてきた。それを可能にしたのが、引っ越しの「品質」重視の経営だ。
サカイは「安心」「丁寧」「親切」「迅速」がモットー。「引っ越しの『品質』とは人です。正社員を補助するアルバイトでも必ず一定の研修を受けてもらい、それから現場に出ていってもらっています」と話す。
広めの洋室や畳の和室、荷物を運びにくくした居住空間を再現した研修センターや、危険な交差点やS字カーブなどを配置した、「引越のため」の独自設計の運転練習場などを用意。安全・安心に荷物を運ぶための技術を身につけるという。
最近、サカイを利用した都内の会社員に話を聞くと、引っ越し比較サイトで見積もりを求めたら、サカイのレスポンスが早く、価格交渉にも応じてくれ、成約までの営業が最も積極的だったそうだ。