小学1年生の子供が鼻血を出す割合は、福岡が26%、福島は3.4%――。東京都内の小児科医が、こんな調査結果をテレビで明かして話題だ。「美味しんぼ」の鼻血描写が物議を醸す中で、なぜ福岡の方が高いのかということだ。
調査は、「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表の山田真さんが震災直後の2011年3~10月にかけて行った。
「鼻血は、子供の3人に1人は出るもの」
山田さんによると、調査したのは、子供が鼻血を出して心配だという相談がたくさん寄せられたためだ。比較するため、福島のほか、福岡と北海道も含め、小学校の保健室にいる養護教員に調査を依頼した。
この3道県で計2700人以上の子供を調べてもらったところ、福岡と福島では前出の結果になり、北海道では、小樽が18%、岩見沢が7%になった。
調査結果は、TBS系ニュースが14年5月12日に報じ、ネット上では、福岡の方が福島の8倍近くも高いことに驚きの声が上がった。「PM2.5のせいなの?」「福岡の子供荒れてるな」「放射能ってマジで健康になるやんw」と勝手な憶測まで流れたほどだ。
山田さんは、福岡が高くなった理由について、分からないとしながらも、こう言う。
「鼻血は、子供の3人に1人は出るものです。ですから、福岡ぐらいの割合になっても当たり前だとも言えます。それも、アレルギー性鼻炎による部分がかなりあるのではないかと思います。福島の方は、意外に少なかったですね。理由は分かりませんが、調査した年の6月から小児科医の仲間と福島に行ったところ、現地の人たちは、鼻血はそれほど多いわけではないと言っていました」
北海道も割合が比較的低くなったが、こちらは鼻血につながる花粉症の発症が少ないことや気圧の変化が大きくないことなどが考えられるという。
美味しんぼが原発事故の影響で鼻血が増えたとしていることについては、描写には行き過ぎた部分があるとみる。
福島県教委「鼻血の相談は上がってない」
「大阪でのがれき処理が原因で鼻血を出す人が続出したら、福島の人たちはみな大変なことになってしまいます。きちんと調査してデータを取ってみないと、原発事故の影響か分からないと思いますよ。チェルノブイリの子供たちが日本に来て鼻血が出なくなったのも、転地してアレルギー性鼻炎がよくなっただけの可能性があるわけですから」
ただ、山田真さんは、漫画が問題提起したことには一定の意義があるとした。
「福島のことをタブー視して、マスコミが取り上げようとしません。それで解決したと思われてしまいますが、全然そんなことはないです。現地の人たちは、何もしてくれないとあきらめています。それは、決していいことではありませんね」
鼻血を出す割合については、文科省や厚労省によると、都道府県ごとなどの調査結果はないという。小学1年生が花粉症やアレルギー性鼻炎などの疾患にかかった割合は、文科省が2013年に行った調査では、福岡14.4%、福島18.2%、北海道12.0%だった。これは山田さんの調査結果と、関連性は見られないことになる。千葉が20.7%もあり、福島が特別高いわけでもなかった。
福島県教委の健康教育課では、「震災直後に鼻血の人が増えたとのうわさが流れたことはありますが、これまでに学校から鼻血が出るという健康異常の相談は上がってきていません」と言っている。