化粧水や日焼け止め、ファンデーションなど複数の異なる役割をあわせ持ち、スピーディに化粧することができる「時短化粧品」の高機能化が進んでいる。化粧水と乳液、美容液という3つの機能をもつ定番だけで、既に市場規模は500億円を超えるとされ、高まる人気を背景に化粧品各社が新商品の開発にしのぎを削っている。
化粧品業界では「時短化粧品は今後の化粧品市場全体をけん引する存在」(化粧品大手メーカー)と見て、一段と力を入れている。
1本で5つの役割こなす
「洗顔したらすぐファンデ」――。資生堂が時短化粧品の新商品としてこの春、自信をもって発売したのが「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーションN」(税込み1404円)だ。1本で化粧水と乳液ばかりか、日焼け止め、化粧下地、ファンデーションと5つの役割をもつ。
洗顔後、化粧水から始めてファンデーションを仕上げるまでの時間は通常、数分~数十分かかってもおかしくない。しかし、この商品を使えば一気に仕上げができる。「忙しい朝は、すばやく短時間で化粧を済ませたい」というニーズから開発された。
美容液とファンデーションを合わせた「BBクリーム」はすでに一般に広まっているが、化粧水や乳液とファンデーションを組み合わせることは技術的に難しいとされてきた。「業界ではおそらく初の商品ではないか」(化粧品会社)とされる。
男性用も登場
ライバルのコーセーは5月16日、1品で美容液と日焼け止め、化粧下地、ファンデーション、フェイスパウダーの5役を備えた「エスプリーク ひんやりタッチ BB スプレーUV」(2268円)を発売する。スプレータイプのBBクリームともいえる存在で、夏向けにひんやりした使用感を加えたのが特徴だ。
時短化粧品は男性化粧品にまで拡大しており、資生堂は男性向けブランド「ウーノ」から、スキンケアと日焼け止め効果をあわせ持つ「スキンケアタンク(UVカット)」(864円)も今春、発売した。
時短化粧品は、3年ほど前から急速に需要が広がった。洗顔後のスキンケアが1本で完了できる商品「オールインワン」や、韓国から紹介されたBBクリームの人気がきっかけだった。景気低迷の中、1本で複数の機能があるという手軽さやお買い得感が人気の背景にあるようだ。さらに、「女性の社会進出が進むにつれて、お金はあるが時間がないという人が増えていることが最大の理由」と、大手化粧品の担当者は指摘する。
化粧品各社は、時短化粧品を単なるブームとしてとらえず、将来的に大きな市場を形成する可能性を秘めた商品としていっそう重視する方針だ。