NTTドコモの業績が低調だ。好調なライバルとは対照的に、2014年3月期連結決算で、本業のもうけを示す営業利益が、計画していた営業利益8400億円を下回る8191億円にとどまり、前期比2.1%減と2期連続の減益になったのだ。
果たしてドコモは巻き返せるのか。
KDDIやソフトバンクと明暗を分ける
4月末に発表された2014年3月期決算は、売上高に当たる営業収益が0.2%減の4兆4612億円、純利益も5.4%減の4647億円と振るわなかった。ライバルのKDDIやソフトバンクと明暗を分けた。ドコモの加藤薫社長は「スマートフォンの販売が思ったよりも伸びなかったことに尽きる」と不振の理由を説明。業績不振に対する経営責任を明確にしようと、加藤社長は「取締役、執行役員の賞与カットを決めた」と発表し、責任はより重大だとして社長自身や副社長、相談役については減額幅を大きくした。
明るい材料が全くゼロではない。ドコモは2013年9月に米アップルの人気スマートフォン「iPhone」の発売を開始した。その効果もあって、新規契約数から解約数を差し引いた純増減は11.2%増の156万件に達した。番号を変えずに他社へと乗り換えられる番号ポータビリティ(MNP)の導入以降、他社への顧客流出で「独り負け」が続いていたが、ようやく歯止めがかかった格好で、iPhone効果が出たのは間違いない。
だが、スマホは月額料金が高いのがネックで、業界内でも「ガラケーからの乗り換えは鈍化しており、スマホにこれまでのような伸びを期待できない」との見方が一般的だ。ドコモのスマホ販売台数は3.7%増の1378万台と、期初に掲げた販売計画の1600万台には遠く及ばなかった。iPhoneが顧客流出の歯止めなどに効果を見せたものの、昨秋の発売直後には在庫が不足し、旧機種iPhone5を安売りしたライバル勢に顧客を奪われ、期待したほどの効果を上げられなかった。また、例年以上に春商戦での顧客争奪戦がヒートアップしたため、高額キャッシュバックなどのキャンペーンを展開せざるを得ず、想定以上に販売費用が膨らんだ。
今季の見通しも厳しい
2015年3月の見通しはどうか。売上高は2.9%増の4兆5900億円を見込むものの、経営環境の厳しさに変わりはないようだ。激しい販売競争が続くことから、端末の割引費用が1300億円増える一方、6月にスタートする新料金プランで音声通話は800億円の減収になると見込んでおり、営業利益は8.4%減の7500億円という減益予想をせざるをえなかった。
ただ、これとて、容易な数字ではなさそうだ。2014年3月期と比べスマホ販売台数は11%増の1530万台、契約純増数も2倍超の370万件という数字を掲げており、加藤社長が「チャレンジングな目標」と言うとおり、達成は簡単ではない。
新料金プランを導入し、契約件数を大幅に伸ばそうとしているが、ライバルとして、KDDIとソフトバンクだけではなく、イオンやビックカメラなどが「格安スマホ」で参入しており、ほかにも異業種からライバルが出現しそうな情勢だ。業界からは「競争は激しさを増す一方で、キャリアといえども安穏とはしていられない」との声も漏れてくる。