2014年3月期の決算説明会を終えたトヨタ自動車の豊田章夫社長が、カメラの向こうの個人投資家やユーザーらに、トヨタの「持続的な成長」について語る。このスマートフォン向けサイト「T‐ROAD」が、にわかに注目されている。
決算説明会などの模様を動画配信する企業は少なくないが、決算説明会直後に収録した、気取りがない社長インタビューの映像を配信するのはめずらしい。
「自分の言葉で、皆さまに私の考えをお伝えするツール」
トヨタ自動車が2014年5月8日に発表した14年3月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前期比74%増の2兆2921億円、純利益は89%増の1兆8231億円となり、6年ぶりに過去最高を更新した。
アベノミクスによる円安効果が利益を押し上げたことに加えて、日本での消費増税前の駆け込み需要、北米では多目的スポーツ車の「RAV4」や高級車「レクサス」が売れた。
売上高は16%増の25兆6919億円。ダイハツ工業と日野自動車を含めたグループ全体の販売台数は、世界の自動車メーカーで初めて1000万台を突破した。
その一方で、2015年3月期は連結売上高が25兆7000億円、営業利益は2兆3000億円といずれも微増の予想。慎重な姿勢をみせた。
そんな豊田社長が「T‐ROAD」では、「トヨタの考える成長」について語った。
同社は13年3月に創立75周年を迎えた。豊田社長は、「75歳からのさらなる成長とはどういうものか、考えたときに思わず口に出てきたのが『将来のために、今もっと努力しようよ』ということでした。先人が耕し、種をまき育ててきた。今、だからこそ収穫できている」と話した。
さらに「なぜ数値目標にふれなかったのか」については、「私が数値を口に出した瞬間に、刈取りばっかりになり、次世代にタスキを渡す時に耕す部分や、種をまいた部分がない状態になる危険性がある。だから、私はあえて数値を言いません」と説明。「数値はあくまで結果で、目的とすべきことはよい商品で、お客さまから笑顔をいただく、それが企業としての目的であると思っている」と語った。
時間にして4分弱だが、丁寧に語りかけた印象がある。豊田社長は「自分の言葉で、皆さまにわたしの考えをお伝えするツールとして用意しました。ぜひとも、今後とも時々見ていただきたいと思います」と、締めくくった。
トヨタの「T‐ROAD」は14年1月に立ち上げたばかり。広報部は「とくに社長専用のメディアというわけではありません」と話す。「具体的な内容やスケジュールなどは決まっていません。ただ、トヨタの情報を直接発信できるメディアとして、また個人投資家やユーザーなどとのコミュニケーションのツールとして使っていければ」という。