1日の利用客が254万人という巨大ターミナルを有する東京都豊島区。人口密度は1平方キロあたり2万673人と、全国の市区町村で最大だが、意外にも人口の減少から東京23区の中で唯一2040年に「消滅する」の危機に陥っているのだという。
これは2014年5月8日、有識者で構成する「日本創成会議・人口減少問題検討分科会」で発表されたものだが、こうした指摘に対し、区や区民は「分析が明らかにおかしい」「ふざけたことを言うな!」などと激怒している。
秋田や島根など5県は市町村の8割以上が消滅する
増田寛也元総務大臣を座長とする有識者会議の発表で、少子高齢化に有効な手を打たなければ自治体が立ちつかなくなるとし、危機が迫る「消滅可能性都市」を発表した。子供を産む大多数を占める20歳から39歳の女性人口に着眼し、2010年から2040年の30年間で女性人口が半分になる「消滅可能性都市」は全国で896自治体。このうち40年の人口が1万人を割る523自治体を「消滅の可能性が高い」と位置付けた。また、秋田、山形、岩手、青森、島根の5県は市町村の8割以上が消滅すると予想した。
そうした中で、東京23区で唯一「消滅の可能性」を指摘されたのが豊島区だった。今回の人口減少問題が地方で深刻なのは、都会、特に東京に人口が流出し高齢者が残ってしまうということなのだが、なぜ東京の豊島区が消滅するのか、ネット上でも「池袋は住みやすい」などと首を傾げる人が多い。
「あれだけ栄えているんだからんだからありえないわ」
「豊島区在住だけど、住んだこともない奴が住みにくいとか言ってんじゃねーよ」
「池袋って外人多くね?そのせいじゃないかな」
などといった感想が出た。
区や住民はこうした発表をテレビや新聞報道で知り、怒り心頭だ。豊島区役所には「将来的に消滅って言うのはなんだ!」「報道内容がおかし過ぎる」などといった電話が相次いでいる。区の企画課に話を聞いてみると、消滅というのは全くの寝耳に水の状態であり、豊島区の現状を認識していない上での分析になっていると激怒している。
「豊島区は住みたいランキングの上位ですし、人口も増えています。特に若い層に注目されていてもっと住みやすくしようと頑張っている時期なのに、水を掛けられたような心境です」
と悔しさを吐露する。
2010年の国勢調査と今とでは状況が違いすぎる
確かに住宅情報サイト「スーモ」の「2014年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版 ―20代~40代編―」の統計を見ると、池袋は総合3位で中目黒、自由ヶ丘を上回っている。ちなみに、シングル層は2位、ファミリー層は5位と人気だ。13年3月には東京メトロ副都心線が開通し、東武線、西武線などを加え5社相互乗り入れと交通がさらに便利になった。アニメイト本社も移転してきたためオタク層の熱い視線も受けているのだという。
それではなぜ消滅の危機だと名指しされたのか。区の企画課では「不明です」と答えた。ただし可能性があるとすれば、今回の研究発表の起点になったのは2010年の国勢調査であり、この頃は人口が減少していた時期だった、という。池袋に外国人が急に増え、治安が心配だとか、池袋周辺は不良行為少年たちのたまり場だと騒がれ、池袋を舞台に抗争が繰り広げられる小説やドラマ、マンガやアニメも多く発表されていた。区の評判はあまりよくなかったのだ。
しかし、その後人気は急上昇しそれまで人気ランキングに登場していなかった池袋がここにきて上位に顔を出すようになった。区の人口も05年の約25万1000人を底に、14年は約27万1000人と増えている。
「子供さんが増えることで新たに待機児童の問題も起きていますが、保育園を増やすなどの取り組みを進めていますし、これからもっと人気のある区にしていくための努力をしています」
と担当者は話している。