ネーミングは重要である。「残業代ゼロ」というタイトルで報道される「ホワイトカラー・エグゼンプション」をみると、つくづくそう思う。
ホワイトカラー・エグゼンプションとは、いわゆるホワイトカラー労働者に対して、週40時間が上限といった労働時間の規制を適用しないなどの労働規制の適用除外制度だ。
サービス残業として、残業代を正当にもらっていないという認識
日本では、労使の関係を契約で明記されないことが多い。その延長線で、労使が労働法規もあまり意識していないことが多い。日本でも、「ホワイトカラー・エグゼンプション」に類するものはなくはないが、はっきりしない部分が多く、活用されているとは言いがたい。一方、欧米ではこうした労働規制の適用除外が明確にある。欧米における適用除外対象者の労働者に対する割合は、アメリカで2割、フランスで1割、ドイツで2%程度といわれている。
日本で今の政権内で検討されているのは、年収1000万円以上の労働者と労組との間で指定された労働者が適用対象だ。前者の年収1000万円以上の割合について、国税庁による2012年の民間給与実態統計調査結果をみると、3.8%しかいない。しかも、この数字は、会社役員をも含む数字であるので、労働者に対する割合はもっと低くなるだろう。「労組との間で指定された労働者」がどの程度なのかはわからないが、日本での労働時間規制の適用除外対象者の割合は、ドイツ並みと考えていいだろう。
「残業代ゼロ」と聞くと、多くの人は自分の境遇に照らし合わせて考える。自分が対象であるかどうかを忘れて、脊髄反射的になってしまう。しかも、日本では、自分のジョブ・ディスクリプション(ホワイトカラー・エグゼンプションと同様に、日本では相当するモノがないために、英語概念で言わざるを得ない!)が明確でないため、いわゆるサービス残業として、残業代を正当にもらっていないという認識の人が多い。となると、「残業代ゼロ」には、かならず反対となる。