居酒屋チェーンなどを展開するワタミが、1996年に株式を上場して以来、初めて赤字に転落する。主力の居酒屋事業や、宅食サービスの不振が響いた。
ワタミの創業者である渡邉美樹・参議院議員も、自身のフェイスブックに「『ワタミ 赤字』のニュースは創業者として重く受け止めています。とくに株主様に対して申し訳ない気持ちでいっぱいです」とのコメントを寄せている。
来店客数の減少が痛手に
2014年5月8日の決算発表を前に、ワタミは14年3月期連結決算の最終利益の予想を13年10月時点の12億円の黒字から、49億円の赤字に下方修正した。前期は35億円の黒字だった。
修正の理由を、ワタミは「第3四半期以降も、国内外食事業の客数が回復せず、既存店の売上高が前年比で2.9%減と計画を大きく下回ったこと、また宅食サービス事業が伸び悩んだこと、さらに介護施設の新規入居者数も伸び悩み、既存棟の入居率が84.9%にとどまったこと」と説明する。それにより、売上高、営業利益、経常利益のそれぞれで計画を下回るという。
加えて、ワタミは居酒屋チェーンの「和民」と「わたみん家」の不採算店舗を中心に、2014年中に居酒屋の1割にあたる60か店を閉店。これに伴う減損損失など特別損失26億円を計上するほか、将来利益を上げる前提で計上していた「繰り延べ税金資産」の22億円を取り崩すことで、大幅な損益を計上する。
ワタミに限らず、低価格だが画一的なメニューが並ぶ居酒屋や牛丼チェーンなど、外食業界の一部はアベノミクスの景気回復の「波」に乗れないでいる。半面、景況感の改善に伴う「プチぜいたく」の需要を追い風に、単価が比較的高い商品をそろえているファミリーレストランなどは好調だ。
居酒屋チェーンにとっては、若者のアルコール離れも売り上げ低迷の要因の一つだが、最近はファミリー層も来店しやすいような店づくりや、子ども向けや素材にこだわったメニューを用意するなどに、工夫を凝らす居酒屋も登場している。
ワタミは、そんな新たな需要の取り込みに、苦労しているようだ。
「トップが政治家になって襟を正さねばいけなくなったことが原因だろ?」
そうした中で、ワタミの創業者で参院議員の渡邉美樹氏も2014年5月3日、フェイスブックに、こう記して、現経営陣にエールを送った。
「創業以来、もっと厳しい危機も幾度とありました。危機に出会ったとき大切なことは、『なぜ危機に出会ったのかを徹底的に分析すること』そして『何百、何千のこれからの仮説を立てること』。それさえ出来れば、あとは勇気をもって検証し続けるのみです。
今のワタミの経営陣には同様に困難に立ち向かい、乗り越える勇気と経験は十分あると信じています」
ただ、これに対してインターネットの反応は総じて冷ややかだ。
「稼ぎ頭だった介護事業が伸び悩んだのが痛いよな。斜陽の居酒屋と違い、介護はどこも伸びてるのに…」
「トップが政治家になって襟を正さねばいけなくなったことが原因だろ?」
「今まで通りのブラック手法が通用しなくなったことが大きい」
「株主だけかよ。申し訳ないのは」
「店舗によっては客入らないところ多いから赤字出すのはしゃーないわな。あと値上げもしたから確実に客減るだろうね」
といった具合だ。
2013年、ワタミは労働問題が表面化したことなどで、「ブラック企業」よばわりされることが多くなった。60か店の不採算店舗を閉めるのも、外部の弁護士などによる有識者委員会が店舗の労働環境の改善を指摘し、慢性的な人手不足を解決する側面がある。
客数減による売上げの低下、ひいては赤字決算も、「ブラック企業」よばわりされたイメージダウンの影響が小さくないかもしれない。