漫画「美味しんぼ」の一部描写が福島への風評被害を助長するとして批判が集まる中、原作者の雁屋哲氏が2014年5月4日にブログを更新した。
騒ぎに対して「どうして批判されなければならないのか分からない」と反論し、インターネット上で波紋を広げている。
「ここまで騒ぎになるとは思わなかった」と驚く
問題視されているのは、ビッグコミックスピリッツ22・23合併号(小学館)に掲載された「福島の真実編」の中で、東京電力福島第1原発を訪れた主人公・山岡士郎らが原因不明の鼻血を出すという描写だ。作中では医師が「福島の放射線とこの鼻血とは関連付ける医学的知見がありません」と説明するものの、本人役で登場する前双葉町長の井戸川克隆氏は、自身も鼻血が出ることや疲労感が強くなったことを明かした上で「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と口にしている。
一連の描写に非難の声が相次ぐと、スピリッツ編集部は4月28日にコメントを発表。「鼻血や疲労感の表現は、綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載させていただきました」として、放射線の影響と断定する意図や、風評被害を助長する意図はないと説明した。
そうした状況の中、沈黙してきた雁屋氏がブログを更新した。冒頭では「当然ある程度の反発は折り込み済みだったが、ここまで騒ぎになるとは思わなかった」と想像以上の反響に驚きを示した。
続きでは「もっとはっきりとしたことを言っている」
福島篇は23、24と続く。その上で雁屋氏は「もっとはっきりとしたことを言っているので、鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない。今まで私に好意的だった人も、背を向けるかも知れない」と、さらに議論を呼ぶ内容になることを明かした。
雁屋氏は、本格的な反論は福島篇が完結してからにするとしながらも、
「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない」
「真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか」
「今度の『美味しんぼ』の副題は『福島の真実』である。私は真実しか書けない」
などと批判に真っ向から反論し、
「今の日本の社会は『自分たちに不都合な真実を嫌い』『心地の良い嘘を求める』空気に包まれている。『美味しんぼ』が気にいらなければ、そのような『心地の良い』話を読むことをおすすめする」
と提案した。
これを受け、ネット上では議論が再燃。「鼻血との放射能との因果関係は医学的には判明していない では何故?っていう問題提起しただけだろ?」「真実は知った方がいい。そこからどうするかは個人の問題」と理解を示す声もあがっているが、
「批判されているのは『真実をありのままに書くこと』じゃなくて『それは真実と呼ぶにふさわしいのか、あまりに恣意的ではないか』という点では?」
「科学的知見を否定しうる『真実』を引っ張ってこれるとは到底思えない」
「福島県民だけど震災後鼻血なんて1回も出したことないわ」
「2年間の取材というのが 偏りの無い客観的な取材だったのか甚だ疑問」
などと疑問視する声も多数寄せられている。
なお、ビッグコミックスピリッツはこの件について、識者の見解や寄せられた意見を掲載する特集記事を5月19日発売号と、同誌のWebサイトに掲載する予定だ。