内閣人事局を新設、省庁の幹部人事が激変! 政治主導で「お仲間」「ヒラメ官僚」が増える?

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   中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」を新設する国家公務員制度改革関連法が成立し、2014年5月中にも発足する。初代局長には杉田和博官房副長官が兼務で就任、夏の定期異動から早速、新方式で幹部人事が行われる。

   「縦割りの弊害や省益ではなく、公務員が国、国民のためにがんばる体制を作りたい」(菅義偉官房長官)との積年の狙いがようやく形になる。政治主導の効果が期待される一方、恣意的な人事への懸念も指摘される。

部長級以上が対象に

   これまで省庁の幹部人事は、各省庁が案を作り、正副官房長官らによる「人事検討会議」で扱われており、対象は各省庁の事務次官や局長級の約200人だった。

   内閣人事局の発足後は、各省庁の審議官・部長級以上の幹部約600人に対象を広げ、その人事に首相や官房長官が直接関わる仕組みになる。閣僚による人事評価を考慮し、官房長官が幹部候補者名簿を作成し、これに基づいて閣僚が任用候補者を選び、首相や官房長官が加わる「任免協議」を経て決めることになる。内閣人事局はこの実務を担い、職員約170人は総務省、財務省、人事院からの出向などで構成する。

   内閣人事局は、幹部人事の管理のほか、官民の人材交流、女性の採用増や幹部登用も目指す。また、閣僚をサポートする各省庁の「大臣補佐官」も新設する。ただ、国家公務員が労使交渉できるよう「協約締結権」を回復させることは見送られた。

   実際の運用で焦点になるのが幹部候補者の名簿づくりだ。官邸で決めるといっても、選抜は従来通り閣僚が行う。官邸は名簿に登用したい人材を入れたり、評価しない職員を外したりして閣僚による人選に枠をはめられる仕組みだ。所属省庁の省益しか考えないような官僚が排除できるわけだ。

   しかし、首相や官房長官が百数十人の内閣人事局職員が作った600人分の人事評価の説明を受け、一人ひとりについて「適材適所」を判断するのは現実問題として極めて難しい。結局、「各省庁の考えの大枠は、首相・官房長といえども、簡単に崩せない」(与党関係者)との見方は根強い。

安倍カラー人事が増える?

   逆に、「官僚が時の政権におもねって、中立性が保てない」(野党)との懸念もある。これまで、政治が省庁の人事構想をひっくり返して軋轢を生んだ例はいくつもある。例えば、城山三郎の「官僚たちの夏」のモデルになった佐橋滋氏が時の通産大臣に次官就任を拒否された(翌年、大臣が代わって次官就任)。自民党政権から細川連立政権に交代した時も、通産大臣が次官待ちの産業政策局長を辞任させる「4人組事件」が勃発し、自民党の政権復帰(自社さ政権)に伴い「正常化」されたものの人事の混乱の修復に数年を要した。

   こうした露骨な政治介入として表面化しなくても、これまでも、政治家との個人的な関係は幹部公務員の出世を大きく左右してきた。首相や官房長官の秘書官経験は、一般に、大きなステップになり、逆に、仕えた"大物"の急逝や失脚で出世競争に後れをとる等の例も珍しくない。

   特に、安倍内閣では、現行制度の下で「安倍カラー人事」が既に多く実行されている。昨年、内部昇格の慣例を破って内閣法制局長官に外務省出身の小松一郎氏を起用する「集団的自衛権容認シフト」の人事は、その象徴だろう。「女性の活用」の名目で、刑事事件で無罪を勝ち取った村木厚子氏を、本命候補を外して厚生労働次官に起用した。

積み残された課題は多い

   昨年6月に外務審議官から次官に就いた斎木昭隆氏は中国に対する強気の姿勢が安倍首相に買われたと指摘される。安倍内閣は、新制度を生かして、こうした人事を増やすことを想定しているといわれる。重要政策で政権の意向に沿った人材を配置し、政策が円滑に遂行できるようにする狙いだが、国会質疑でも、政治家の顔色ばかり伺う「ヒラメ公務員」が増えるのでは、との指摘も出た。

   要は、能力と実績に基づいて公正に評価できるかがポイントになる。稲田朋美行政改革担当相は「複数の視点によるチェック」を強調したが、外部からの幹部登用も含め、政令で定める適格性審査・評価の基準や、首相、官房長官、各閣僚の三者協議の基準などは、今のところ明確にされていない。

   そもそも、中央省庁のタテ割り是正のためには、全省庁一元採用や各省間の交流の体系化など、積み残された課題は多い。労働基本権問題も含め、内閣人事局発足は公務員改革の始まりに過ぎないといえそうだ。

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