安倍カラー人事が増える?
逆に、「官僚が時の政権におもねって、中立性が保てない」(野党)との懸念もある。これまで、政治が省庁の人事構想をひっくり返して軋轢を生んだ例はいくつもある。例えば、城山三郎の「官僚たちの夏」のモデルになった佐橋滋氏が時の通産大臣に次官就任を拒否された(翌年、大臣が代わって次官就任)。自民党政権から細川連立政権に交代した時も、通産大臣が次官待ちの産業政策局長を辞任させる「4人組事件」が勃発し、自民党の政権復帰(自社さ政権)に伴い「正常化」されたものの人事の混乱の修復に数年を要した。
こうした露骨な政治介入として表面化しなくても、これまでも、政治家との個人的な関係は幹部公務員の出世を大きく左右してきた。首相や官房長官の秘書官経験は、一般に、大きなステップになり、逆に、仕えた"大物"の急逝や失脚で出世競争に後れをとる等の例も珍しくない。
特に、安倍内閣では、現行制度の下で「安倍カラー人事」が既に多く実行されている。昨年、内部昇格の慣例を破って内閣法制局長官に外務省出身の小松一郎氏を起用する「集団的自衛権容認シフト」の人事は、その象徴だろう。「女性の活用」の名目で、刑事事件で無罪を勝ち取った村木厚子氏を、本命候補を外して厚生労働次官に起用した。