王子HDがニュージーランドの紙事業買収 なぜ「産業革新機構」が後押しする?

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   国内大手の製紙会社、王子ホールディングス(HD)がニュージーランド(NZ)の製紙・製材大手「カーター・ホルト・ハーベイ(CHH)」からパルプや板紙などの事業を買収する。

   なぜNZの会社かというと、同国が世界的に限られた地域でしか供給できない針葉樹の宝庫で、これを原料とした紙パルプを確保することで、成長著しいアジア向け販売を強化し、収益増につなげるのが狙い。国内需要は頭打ちで、海外に活路を見いだそうという素材産業の生き残り策というわけだ。

針葉樹パルプを原料とした段ボール原紙は強度に優れる

紙パルプ確保を狙う(画像は「王子ホールディングス」サイト)
紙パルプ確保を狙う(画像は「王子ホールディングス」サイト)

   今回の買収は官民ファンドの産業革新機構と共同で実施するというのが大きな特徴だ。「落ち目」の産業を官の力で後押し、という構図になっている。

   買収額は10億3700万NZドル(約910億円)。革新機構は3億6300万NZドル(約320億円)を上限に出資し、王子HDが残りを出資する。2014年度中に手続きを完了する予定で、株式取得後の出資比率は王子HDが議決権ベースで60%、革新機構が40%となる。

   CHHは、NZやオーストラリアを拠点に、針葉樹を原料としたパルプや段ボール原紙の製造販売などを手掛けている。広葉樹パルプや古紙に比べると、針葉樹パルプを原料とした段ボール原紙は強度に優れており、傷が付きやすい果物や医薬品などを運ぶ際の活用に適しているとされる。急速に経済的発展を遂げるアジアを中心に強度が優れた段ボール需要は高まるとみられるが、針葉樹パルプが供給できるのは、北米やスカンジナビア、NZなど世界的にも限定された地域だけだ。

アジア市場向けに事業拡大

   少子高齢化で国内の紙需要の先細りという厳しい経営環境に直面する王子HDは、海外事業の拡大に力を入れつつある。2011年にはマレーシアの段ボール加工大手を買収するなど、アジア各国で段ボール事業を展開しているが、これまでは原料として古紙や広葉樹を使うしかなかった。今回の買収で、貴重な針葉樹資源を安定的に調達することが可能となり、アジア市場向けの事業拡大につなげられる可能性は高まる。

   今回の買収に当たって王子HDは「紙・パルプ事業で世界の1位や2位になりたいという戦略ではない」と強調。むしろ「紙にこだわる必要はないというのが一つの方向性だ」と述べ、今後、海外展開を進めるとともに、紙パルプ事業以外にも手を広げ、内需の低迷による先細りを回避する方針だ。

   産業革新機構については、「技術や事業の将来性を見抜く眼力を官製の組織が備えているのか」「市場での公正な競争が損なわれる恐れもある」などの懸念が叫ばれ続けているが、機構自身は「(我々が企業を支援する際の)最大のポイントは、オープンイノベーション(組織の枠組みを越え、知識・技術を広く結集すること)が起きるかどうかだ」と指摘。そのうえで、針葉樹資源に乏しいという弱点を補い、国際的競争力の強化につながる今回の王子HDへの支援に絡み、「こういった現地モデルを作ることで、素材産業の新しい切り口を(他の企業や業界に)示したい」と強調する。素材産業は現在、一様に国内需要減に苦しんでおり、広く素材産業全般に復活のヒントを与えたいというのが狙いのようだ。

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