カット野菜の市場が拡大している。
女性の社会進出や高齢化、核家族化を背景に、「食べきりサイズ」や「すぐに料理できる」手軽さが人気の理由だが、加えて2013年後半の生鮮野菜の高騰で割安感が高まった。
製造大手の売上高、前年度比20%増の206億円
キユーピーと三菱商事が共同出資する、カット野菜製造大手のサラダクラブの売上高は2013年度に206億円。前年度に比べて20.5%増えた。
同社のカット野菜は、「千切りキャベツ」や「カットレタス」などのサラダ用の商材が中心。品揃えとしては、炒めもの用や冬季限定の「蒸し野菜用」、また薬味用の青ネギや白髪ねぎも用意している。
スーパーなどに行けば、キャベツは1玉(1キログラム)200円前後で売られている。「千切りキャベツ」は1袋(130グラム)98円(希望小売価格、税別)だから、単純計算すれば、カット野菜のほうが割高にみえる。しかし、最近はカット野菜が人気。使い切れずに腐らせたくないと考える単身者や主婦などが増えているそうだ。
切らずに袋から出してすぐに食べられる、料理できるのも便利。サラダクラブは、「忙しい女性が増えていることや、試しに使ったお客様がその後も繰り返し使ってくれていることが(売り上げが伸びている)要因とみています」と話す。
2013年後半に生鮮野菜が高騰したときには、本来であれば仕入れ野菜の価格も上昇するが、同社は野菜を契約農家から直接仕入れていたことが奏功。売値を上げたり、容量を減らしたりすることなく安定供給できたうえ、割安感につなげられた。
とはいえ、一方で気になるのが「栄養価」。これまで「カット野菜は栄養価が落ちる」と、たびたび話題になってきた。
サラダクラブは、「野菜にはビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素も含まれていますから、工場でカット、水洗いをすることでそれらの成分が流出する可能性はあります。ただ、研究所で残存率を調べたところ、栄養素が著しく損なわれることはありませんでした」と説明する。
また、食べるときには「袋から出してそのまま食べてほしい」ともいう。「商品は家庭で水洗いする必要がないようにしてあります。家庭で水洗いして、かえって栄養素が流れる可能性もありますし、水切りが不完全でサラダなどに使う場合にはおいしさを損なうかもしれません」と話している。
ローソン、野菜づくりの「土」や洗浄時の「水」にも「こだわり」
コンビニ大手のローソンでも、カット野菜は売り上げに貢献する「成長株」という。集客効果の高い商品で、「カット野菜は、仕事帰りの女性や単身者などが、揚げものや惣菜といっしょに買っていく、『買い合わせのよい』商品といえます。(好調なのは)お子さんに安心して食べてもらえることもあります」と話す。
ローソンのカット野菜の中でも「カットキャベツ」と「カットレタス」は、土づくりに徹底的にこだわる「中嶋農法」という農法を用いた野菜を使っている。中嶋農法は、土壌に含まれる11種類のミネラルを分析し、欠乏している要素があれば補給し、常に土壌を最適な状態に維持しながら野菜をこしらえるのが特徴。現在は群馬県の富士食品工業と組んで、関東甲信越地区の限定商品として販売している。
カット野菜の栄養価について、ローソンは「野菜自身の品質のよさに加えて、製造工程でも殺菌後の洗浄時に地下水を汲み上げた水で洗い流すなど、こだわりをもってつくっています」と説明する。
「野菜ミックス」や「炒めもの用」のカット野菜は、契約農家やローソンファームを通じて野菜を調達しているが、「中嶋農法への移行を進めており、将来的には全国展開したい」と考えている。