韓国の大型旅客船セウォル号の沈没事故をめぐり、ローマ法王フランシスコが発したとされる言葉をめぐり、一部で注目が集まっている。事故への哀悼の意を表す一方で、韓国国民に対して、事故を「道徳的、霊的に生まれ変わるための機会」としてとらえるようにうながした、というのだ。
見方によっては韓国への強烈な批判だと解釈することもできるが、法王の真意は不明だ。
韓国では10人に1人以上がカトリック信者
法王は2014年8月に韓国大田(テジョン)市で開催される「アジア・ユースデイ」への出席が決まっている。これを前に、14年4月24日にカトリック大田教区の兪興植(ユ・フンシク)司教がバチカンを訪れ、法王と謁見した。その時の様子を韓国メディアが4月25日から26日にかけていっせいに報じた。韓国のカトリック教会の統計によると、韓国国内の信者数は13年時点で約544万人。人口比で10%強だ。それだけに、法王の動向は韓国の国民に対しても影響力があると言える。
報道によると、法王は事故で多くの若い命が失われたことを悼み、犠牲者や遺族、韓国の国民に対して哀悼の意を表した。波紋を広げそうなのは、韓国国民への呼びかけの内容だ。発言を伝えたメディアによって若干のばらつきはあるものの、大筋で以下のような内容だ。
「韓国国民がこのセウォル号の悲劇を道徳的(倫理的)、霊的(精神的)に生まれ変わるための機会としてとらえることを望む」
日本ではこの発言はほとんど伝えられておらず、中央日報が日本語版で報じたぐらいだ。それでも日本国内では、このニュースに気づき、法王が韓国を遠回しに批判したと受け取る向きもあるようだ。例えばジャーナリストの室谷克実氏は、4月30日発行の夕刊フジに寄稿した文章で
「取りようによっては、『韓国』というシステム、『韓国民』という実体に対するトータル否定だ」
と指摘している。
復活節にちなんで「生まれ変わる」「復活」を使ったという説も
半面、発言を報じる韓国メディア(韓国語版)の記事にはまったくといっていいほどコメントがつかず、ほとんど反響はない状態だ。
カトリックでは、2014年は4月20日がキリストが復活したことを祝う復活祭(イースター)で、その後50日間を「復活節」(イースター・シーズン)と定めている。法王の発言は復活節の期間に出たことから、「復活」や「生まれ変わる」といった言葉をあえて選んだとの説や、「惨事をしっかり受け入れるように」といった趣旨の信者への励ましの言葉だとの説も出ているが、真意は不明だ。
なお、法王は4月19日には、
「韓国のフェリー事故の犠牲者と家族のために、ともにお祈りください」
とツイート。1万2700回以上リツイート(転送)された。